P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

INTERVIEW

東京土産ブランドをつくりたい。「GIANDINO」後編

株式会社エーデルワイスが新たに立ち上げた
東京土産ブランド『GIANDINO』。
そのパッケージデザインを手がけたP.K.G.Tokyoが
パッケージデザインの開発経緯についてクライアントと語り合う。

GIANDINO 【前編】はこちら >

株式会社エーデルワイス
執行役員 商品本部 副本部長
地引 浩司氏

株式会社エーデルワイス
営業本部 新規開発室 課長
後藤 久輝氏

P.K.G.Tokyo
天野 和俊
柚山 哲平
中澤 亜衣

インタビュアー
神野 芳郎

デザインのキーワードはストライプだった

−ネーミングも決まって、いよいよデザインですね。

柚山:その頃には、商品自体もフィニッシュに近い状態で、クッキーの形に似た帽子をイメージに取り込んだ案や、キャラクター性を持たせるために、小鳥をモチーフにして、その小鳥がジャンドゥーヤの素材であるヘーゼルナッツを運んできているイメージの案もありました。

あのお土産物の激戦区の中で、どうやってパッケージとしてアピールするのか、私たちにとっても大きな課題でした。その一つのアイデアとしてキーワードになったのがストライプ。実際にパッケージを立体化して、いろんな案と並べてみたとき、「これだけ太い赤白のパッケージって目立つね」という話になり、それを品良く仕上げていこうと思いました。

中澤:デザインの段階から後藤さんも加わってくださいましたね。

天野:後藤さんは、売り場のことを本当に知っていらっしゃるので、どうやったら売れるかを常々考えていましたよね。

柚山:後藤さんに入っていただいたおかげで、ある意味リアルな声がパッケージに反映されたと思っています。デザインが派手すぎるのかどうか、その議論はよくしましたね。
まだまだ『GIANDINO』は、売り場の声をピックアップして、良い所を残しながら変えていく必要もあると思うんですよね。
それはもしかしたら、パッケージだけの話じゃなくて、味だったりもするかもしれないですが。

後藤:今のデザインでさえ私には派手すぎて「恥ずかしい」とか言いましたもんね…。

柚山:「ターゲットとなるサラリーマンがこの箱を持って恥ずかしいと感じるかどうか」、そこは、いろいろと議論した点ですね。

後藤:派手さというか、スーツを着てビジネスバッグを持ったお客様がどう感じるか。ずっとイメージをしています。

柚山:箱の大きさも議論になったんですよ。大きすぎると荷物になるじゃないですか。お土産という手前、やっぱりあんまり大きい荷物をお客さんに運ばせたくないのもあって、どのサイズがベストなんだろうって。
技術的にクッキーがつぶれないように個包装してセットにすると、このサイズになります。その大きさを目立つ面積が広くなったとポジティブに捉えて、楽しいものを買って帰ってきたという気分を感じてもらえるようにデザインしました。

天野:いただいてみませんか?

インタビュアー:わぁ!うれしいです!

後藤:『ナッティーショコラクッキー』がメインなので、こちらからぜひ。
インタビュアー:個包装もオシャレですね。程よい品を感じます。

柚山:実はエーデルワイスの深田さんのご意見が、大きなウエートを占めていて。今回の企画のリーダーである上に、デザインの細部にいたっても女性らしい繊細さを視点に意見してくださったので、本当にいいコラボレーションができたと思っています。

インタビュアー:ちょっと贈りものにできそうな感じがうれしいと思います。

天野:実は我が家で話していたんですが、冷蔵庫で冷やして食べたらおいしかった。口の中に入れると溶けておいしかったそうです。もしかしたら、そういう食べ方をお勧めするのもありなのかも。

後藤:本当ですね。それは実際にちょっと売り場でしましたね。販売当初は、本当に暑かったんで。

インタビュアー:お子さまが食べても、大人が食べてもちょうどいい。

後藤:そうですね。

インタビュアー:イタリアにはアベリティーボっていう、ちょっと食事の前に軽く一杯って食文化があるから、チョコレートでお酒を楽しんでもよさそう。

検証された最適なストライプ

−デザインの最終提案は、どれぐらいの数まで絞れたんですか?

柚山:最初は5案か6案ぐらいから、ストライプというところに絞られて。その後はどういうストライプが良いか検討しました。いろいろな表現のバリエーションを経て1案に絞られていきました。

その頃『ナッティーショコラクッキー』だけでなく、もう1タイプあった方がいいよねという話があって、『ナッティーブラウニー』には、どんな表現が良いか検討を始めました。

−特徴的な太さと、うまく調和が取れたストライプだと思います。このストライプの太さというのは、ずいぶん差があったんでしょうか?

柚山:かなりの数の検証を繰り返して、この大きさに決めました。箱の大きさは3タイプあるんですが、実はその大きさに関わらず、個包装など全て同じストライプの幅になっているんです。それは棚に積んだときに、統一感と一体感をつくりだすためです。なので、太すぎてもいけないし、細すぎてもいけない。その視点で適切なストライプの太さを探しましたね。青いストライプの案やもっと細かいストライプの案もあったんですが、最終的にはこの紅白に落ち着きました。

天野:どの大きさの箱が一番売れますか?

後藤:やっぱり小さい箱が売れますね。お土産と自分用でしょう。

柚山:地引さんたちは、何を決め手にこのデザインを選ばれたんですか?

地引:普段百貨店で販売しているギフトって、売場で平積みして置いておくことがないんですよね。ショーケースに蓋の開いた状態で斜めになって、イメージを作って、選んでいただくというのが基本なんです。

百貨店のようにテナントとして目立たせるのではなく、土産売場で箱がパッと積まれたときに、どれだけ視認性として目立てるかを一番のポイントだと思っていましたから、いろんなご提案いただいたデザインの箱を重ねて、横から見てみたらどれが一番目立つだろうって考えたりしました。だから、このストライプに決まってからも、側面のストライプ柄もいろいろ検証しましたよね。

柚山:デザイン的な観点でいえば、ストライプの量というのを気にしていて。これは店舗を開発するときにも、どこまでストライプというものを表に出していくのかというのは、常に天野と僕との中でも議論の対象にはなっていたんですよ。あんまりストライプというのを強く出しすぎると、下品とまでは言わないんですが、やっぱりちょっとキャラクターが変わってきてしまうというのがあって。上品な使い方というのはどのラインなのか、目立たなきゃいけないんだけれども、あまり派手すぎず。それでもやっぱり控えめにならないようにという量は、デザインサイドではかなり検証していた部分かなと思います。

天野:皆さん、第一印象はストライプが良かったんですよね。

中澤:営業さんというのは、やっぱり違うなあと思いながらも、結果的にエーデルワイスの皆さんがストライプが良いと言っていたのが、すごく印象的だったんです。見栄えが、すごく鮮やかに見えたんでしょうね。

地引:実は好みだけでいったら、「これ、格好いいな」というような別案があったんですよ。

地引:海外の免税店で売っていてもおかしくないようなデザインの。

柚山:ありましたね。

後藤:「でも、これが積み上げられていて、はたして本当に売れるんだろうか」と考えたときに、最終的な選択肢としてストライプになったんだと思います。

柚山:このストライプが今後どういうふうに使われていくのか。認知度が上がっていくと同時に抑えていくのか、逆にもっと積極的に使っていくのかは、今後次第ですね。いずれにしてもポジティブに変化をしていくことになるとは思いますが。

柚山:ちゃんと「おしゃれだな」と思える範囲での派手さが大切ですね。私もそうですが日本のビジネスマンは、みんな黒やグレー、紺色のスーツだったりと無難な選択をする方が多い。だからお土産を買うときぐらいは「楽し気なものを選ぼう」という意識になるデザインを目指しました。

インタビュアー:パッケージデザインの赤色の選び方が絶妙だと思います。

柚山:やはり、おいしそう、たのしく見える、月並みですがそんなことを考えると赤に行き着く。ところが意外と東京土産のジャンルで赤を使っているものがほとんどなかったんですよ。赤のような強い色を使うってチャレンジな面もあるので、他社があまり挑戦したがらなかったのかもしれませんね。

心が動くロゴデザイン

−GIANDINOのロゴデザインは?

天野:深田さんからいただいたイメージボードの世界観と、ナッツのコロンとした感じが、ちょうど合うんじゃないかと思って書体を選びました。

柚山:ちょっとレトロなんだけど古臭く感じなかったり、イタリアらしくて可愛げがあったりというような、書体や写真をたくさん集めてくれたイメージボードでした。そのイメージに沿った書体を天野とセレクトして、最終的には私がパッケージに落とし込み、ブラッシュアップするというプロセスでしたね。クライアントサイドから受け取ったバトンを持って、私たちのほうでゴールしているという感じですかね。

天野:やっぱり深田さんの強い思いが出ている。最初から最後まで、深田さんのペースに、我々が乗っているような感じではありましたね。

柚山:パッケージ用紙のクラフトっぽさを推していただいたのも深田さんでした。『ナッティーブラウニー』も、クラフトを積極的に使っているんですけど、カジュアルさをうまく表現できていると思います。

天野:ショッパーとかはどうですか?

後藤:紙袋は「おっ」っていう反応が男性からありました。

天野:今回あえてストライプにはしませんでした。

柚山:私のまわりでも紙袋の評価は高いですね。『ナッティーブラウニー』のようにストライプではない商品が増えたことによって、ブランドに奥行きが出たのではないでしょうか。

インタビュアー:おみやげでこのクオリティーに出会えるのは、うれしいと思いますね。

後藤:男性はブラウニー、女性はクッキーを選ぶ傾向。

インタビュアー:お菓子の流行は?

地引:お菓子業界的には、半生系より、クッキー系だよね。

中澤:半生の時代は終わりつつあるのですね。

P.K.G.Tokyoとのパートナーシップ

−『GIANDINO』が始まって、社内の反応はどうですか?

地引:正直いろんな意見があります。ただ、他社でやっているものと同じことをしても、出てくる答えって、期待以上のものにはならないんじゃないかという思いが強かったんですね。

『GIANDINO』をきっかけに、いろんな見方をしてくれる社内の人が増えているんで、それは良かったなと思います。

天野:もしかしたらいい意味で、御社のブランド戦略に変化を与えるかもしれないですね。

柚山:株式会社ジャンディーノとして、独立したもう一つの顔を持つということは、今後良い面も出て来るでしょうね。今までのエーデルワイスブランドに新しい切り口が加わったと、社員の皆さんが思っていただけると、この商品としても生まれた価値があったのかなという気がします。

−発売されて、まだ本当に間もないんですよね?

後藤:まだ40日(取材時)ですね。売場の販売員の方やお客さんからの反応もありますので、これからが楽しみですね。

柚山:「できました、ここで終わりです」なんていうことは絶対にないので、いい意味で変化していかなきゃいけない。チャンネルを合わすみたいに、自分たちの思惑と違ったベクトルをちょっとずつ合わせていくプロセスは、当然発生していくだろうなという気はします。

インタビュアー:そうですね。また、売場は違えどデパートでも、「エーデルワイスのこのパッケージが」みたいなお声も聞こえるようになってくるとうれしいですね。今後の展望についてお聞かせください。

地引:3年後にはそれなりの売上げを目指しています。

天野:そのためには何が必要か。私たちに何ができるか。次のアクションを起こさないといけませんね。

地引:やっぱりその辺は、来期からアクションを起こさないといけないですよね。もしかしたら高価格帯が必要なのかもしれませんしね。手土産というよりも、贈答品価格として3,000円、5,000円価格ですね。

柚山:企画段階から入って、いろいろチャレンジしてみたいですね。今後もし新商品を開発するタイミングがあれば、もっと本能的に買いたくなるような、商品自体の見た目を開発できたら面白いなと思います。それを踏まえた上で、パッケージ開発というタイミングがあれば面白いですね。

インタビュアー:あと売場の確保という面では、大変だったりはするんですか? 新商品を、お土産の所に置くというのは。

後藤:もう激戦で、すごく大変ですね。1つの場所に本当に10社ぐらいが競合するんで、そう簡単には取れないですよね。味がおいしいかはもちろん、パッケージも含めた見た目が本当に大事ですよね。

天野:売り場は羽田空港から始まって、先日は東京駅の京葉ストリート、東京スカイツリーのソラマチ、品川と続きます。

天野:エーデルワイスさんにお声かけいただいて、デザインの手前から一緒に取り組ませていただいた。本当にいいプロジェクトでした。

地引:まだ生まれたてで今後は、出店の仕方だったり、常設店だったり、微妙に方向性が変わってくることもあると思う。もしかしたら大人っぽくなるかもしれないし、逆もあるかもしれない。売上、お客様の声、出店している運営管理側の方のご意見だったりを、どう進化させられるか。もう立ち上げたからにはがんばらないと。

天野:東京土産からはじまっているが、ジャンドゥーヤというカテゴリーを広げていくということもあるかもしれない。生まれてしまったものが育っていくように、ぼくらがサポートできればうれしいです。

−ありがとうございました。


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