P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

COLUMN

紙、サステナブル、少し甘めのコーヒー。

海洋ゴミ問題を発端にプラスチックの存在価値が再定義されている昨今。「紙」というマテリアルが再評価され、期待値が高まっていると感じています。職業柄、日頃から「紙」という素材に注目することが多いのですが、いろんなものが紙で代用されたり、紙の特性が見直され、新たな可能性を探す取り組みが各所でなされているからです。

皆さんは「バガス」というものをご存知でしょうか。バガスとはサトウキビの搾りかすのことで、役目を終えた植物の繊維です。世界中で年間12億トンが生産されるそうで、一部はバイオマス燃料や家畜の飼料として使われているものの、そのほとんどは廃棄されてしまうそうです。つまるところ、おおよそは燃やされ二酸化炭素になっていると予想されるのです。このままではいけないと、そのバガスを再利用してできた紙が「バガス紙」です。バガス紙はこれまで、いわゆる再生紙として粗雑な紙だと認識されてきました。しかし現在では製紙会社の努力の甲斐あって、化粧品の箱などにも利用される美しい高級紙に生まれ変わっています。

港区芝にあるGOJOギャラリーでは現在、P.K.G.Tokyoと五條製紙株式会社の共同企画展、P.K.G.Lab. Exhibition「BAGASSE MOVEMENT」の展示をしています。役目を終えたバガスという植物繊維の時間を巻き戻し、また価値のあるものに変換していく。本展覧会では、そんな時代の潮流「BAGASSE MOVEMENT」と名付け、デザインという目に見える形にして展示しました。そして今回デザインしたものは「紙の時計」。壁掛け時計に生まれ変わったバガスは新しい役目を得て、新しい価値を体現しています。
P.K.G.Lab.とはP.K.G.Tokyoが新たに設けたデザインの実験場。社会的課題を見つけ出し、デザインという立場でその課題を解釈して、少しでも社会をアップデートしていきたいと考えて始めた取り組みです。その第一弾となるが本展覧会である「BAGASSE MOVEMENT」となります。

「紙の時計」。聞きなれないフレーズですが、どこか新しさと魅力を感じます。白くて美しく心地よい手触り。虹のような光沢。紙の持つ独特の軽やかさ。どれも個性的な時計たちです。基本的に壁掛け時計は一度飾ると、そのままずっと触らないもの。しかし「紙の時計」はその風合いによって存在自体が軽やかで、気分によって変えたくなるような新しい時計のあり方を感じます。バガスは初めて知った人にはとても縁遠いものに感じるかもしれませんが、あなたが今飲んでいるコーヒーに入れたひと匙の砂糖。この時計たちは、その一杯と同じルーツを持つ時計です。新しい時間を刻む時計に生まれ変わったバガスを是非ご覧ください。

P.K.G.Lab. Exhibition 「BAGASSE MOVEMENT」

【会場】GOJO PAPER GALLERY
【会期】2019.12.11(Wed) – 2020.02.14(Fri) 土日・祝日休館
【住所】〒105-0014 東京都港区芝2-31-15 北海芝ビル1階
【TEL】03-3457-0680
【トークイベント】2月6日(木)19:00〜20:30 @GOJO PAPER GALLERY

※会期が延長となりました。

https://www.gojo.co.jp/gallery

P.K.G.Tokyo ディレクター:柚山哲平

COLUMN

パッケージが伝える「機能的価値」と「感情的価値」。その先にあるもの。

「プラスチックフリー」「脱プラスチック」という言葉を目にする機会が増え、多くの展示会などでは必ずと言えるほど、それらに関わるブースが設けられ、メディアを通じてニュースや記事に触れることが、年々増えてきたように感じられます。しかしながら、日々の暮らしの中で、私たち一人一人がその問題を意識し、向き合い行動していることが、どれだけあるでしょうか? より良い未来に向けて私たちができること…。そのために必要な意識とは、どのようなものなのでしょうか?

この秋、ネスレ「キットカット」ブランドより、外袋がプラスチックから紙パッケージへと変更された5つの商品が発売され、話題となりました。お菓子の大袋の外袋に紙パッケージが使用されることは業界初となり、生産上のコスト面を重視するのではなく、廃棄物のない未来を目指しての取り組みとして注目を集めています。
この紙パッケージ発売後、様々な企業のプラスチック削減に対する取り組みについてを聞くシンポジウムへ参加する機会があり、「環境問題に積極的に取り組むこと、それを実現し継続していくことは、世界No.1ブランドとしての責任。」と、今回の紙パッケージ開発に対する想いを話されていたネスレの方の言葉が、強く印象に残っています。

「キットカット」はチョコレートで最もグローバルなブランドのひとつにあたり、それを取り扱うグローバル企業が、消費者に見える明確な形として、プラスチック削減と環境問題への取り組みに対する意思、その実現性を示してくれたという点には、非常に大きな意味があり、多くの人に気づきや関心を与えてくれたという点からも、この取り組みの意義と貢献度の高さを理解することができるのではないでしょうか。

あり余るほど多くの商品が市場に溢れ、多くの企業が存在する社会において、環境問題や社会問題への実践的な取り組みを、目に見える明らかな形として消費者に見せること、その意思を明確に示すことが、企業価値のひとつにつながる時代になったことを実感します。

「キットカット」の紙パッケージには、プラスチック素材とは違う手触りや風合いなど、穏やかな「温かみ」があります。そして、どこか懐かしい雰囲気からか、スーパーやコンビニエンスストアの棚に陳列される姿に好感を持つことができました。それはそこに、商品を「手に取りたい」と思わせる温度感を感じることができるからなのかもしれません。

そして、この紙パッケージの使い道として「パッケージを切り取って想いを伝える折り紙を折ろう」というおまけの要素が備えられており、これには「最後まで美味しく、楽しく」という、ネスレのお菓子に対するモットーが込められているそうです。

この「折り紙」のアイデアによって、紙パッケージに対して「機能的な価値」だけではなく、「感情的な価値」が加えられています。これまでも様々なシーンで想いを伝える手助けをし、たくさんの誰かを応援してきた「キットカット」ブランドらしい「思いやり」を感じ、商品と共に提供される「伝える」というコミュニケーションによって、廃棄されるであろうパッケージが折り紙のギフトとして形を変え、感情を伴い生まれる“アップサイクル”を可能にしています。

現在、日本で廃棄されるプラスチック量は、年間900万トンと言われています。
「キットカット」の外袋を紙に変えることで見込まれる年間のプラスチック削減量は、約380トン。900万トンという大きな数に比べてしまえば僅かなようにも感じられるこの数字からは、「ひとつの企業」の「ひとつのブランド」の「ひとつの商品」、「その中の一部分」のパーケージ素材を紙へと替えるだけで、これだけのプラスチック量が削減されるということを知ることができます。そしてそれと同時に、私たちが普段何気なく買い物をし、食事をし、生活をする中で、どれほど多くのプラスチックを含めた廃棄物を出しているのか?ということを連想できるのではないでしょうか。

「今私たちの目の前にある多くのゴミたちは、どこへ行くのだろうか?」と考えた時、それらは決して消えて無くなることはなく、同じ地球の中でどこか別の場所へ移動しているだけなのかもしれない、という想いにたどり着きます。プラスチックから紙へと替えられたパッケージも、単なるゴミとして捨てられてしまえば廃棄物には変わりはなく、処理されていく末を想像した時、多くの課題が山積みという現実に気付かされます。

今回の「キットカット」紙パッケージの事例を通し、使用する素材の選択、3R(リユース、リデュース、リサイクル)やアップサイクルへの配慮など、パッケージやデザインの作り手として、今後向くべき方向や視点の先を 理解し直すことができました。モノ作りにとって重要となる、生み出されたモノが持つ「機能的な価値」と「感情的な価値」、それを生み育んでいけるという点においても、デザインという思考の持つ価値の大きさ、可能性を、改めて意識することができたように思います。そしてそこには常に、生み出すことへの責任が伴うということも。

3Rが提唱されて長い時間が過ぎた今でも、それらを暮らしの中に取り入れ継続していくことには、利便性が伴わないという難しさがあります。しかしながら未来を視野に入れた時、利便性の問題をクリアできるような、日常から生まれる発見や工夫、一人一人のモラルと意識が絶対的に必要となっていきます。「自ら考え、何を選択するか?」を個人に任されている時代だからこそ、買う側としての責任、消費する側の責任として、普段自分が手に取るモノは何かに対して正しいと感じられるものを選んでいきたい、そう感じます。「モノが生まれ、消費され、行き着く先を想像できること」。この小さな意識こそが、これからを生きる私たちが持つべき、重要な意識のひとつなのではないでしょうか。

P.K.G.Tokyo : 矢内靖子

COLUMN

愛されるブランドの裏話。 — SORACHI 1984 ファンミーティング —

2019.09.13

19年8月4日、SORACHI 1984新ラインナップの発送開始日に合わせて、1984の日にSORACHI 1984 ミッションアンバサダー“ファンミーティング”が開かれました。SORACHI 1984ミッションアンバサダーとは、飲用体験の感想やこのビールに合う料理の紹介などをSNS上で積極的に情報発信をしてSORACHI 1984を一緒に盛り上げてくれるファンの方々です。なんと1万人を超える応募の中から1984人が選ばれたそうです。選ばれた方は発売に先行して試飲缶を手にすることができたり、ミッションアンバサダー限定イベントへの参加ができます。

そして、その限定イベントであるミッションアンバサダー“ファンミーティング”にトークゲストとして、P.K.G.Tokyoアートディレクター柚山と、弊社デザイナー白井で参加してきました。

この日はまさに夏本番。日差しが照りつける猛暑日にも関わらず、たくさんの方が来場されています。ミッションアンバサダーの皆さんは当然どなたもSORACHI 1984のファンで、ビール上級者の方ばかり。アンバサダー同士、語り合う言葉にも熱が入ります。みなさんとても気さくな方々で、非常にアットホームなSORACHI愛に溢れた会です。そして、まずはサッポロビール株式会社 高島社長のご挨拶から。

SESSION、DOUBLE、ANOTHER STORY “AMARILLO”。
Amazon限定販売の新しいSORACHI 1984のシリーズお披露目に、皆さんのテンションも最高潮。皆さんこのためにいらしたと言っても過言ではなく、それぞれの個性を確かめるように飲み比べてらっしゃいました。そして新しい味を楽しみながら、トークショーは始まります。

司会者:サッポロビール株式会社 ブリューイングデザイナー 新井健司氏
登壇者:サッポロビール株式会社 チーフアートディレクター 田中章生氏
P.K.G.Tokyo アートディレクター 柚山哲平
P.K.G.Tokyo デザイナー 白井絢奈

※以下、トークショーの内容を抜粋。(敬称略)
(制作過程のラフデザインなどをスライドしながらトークショーを進めました。)

新井:本日は特別にお呼びしたスペシャルゲストの方々に、SORACHI 1984のパッケージができるまでの裏話をお話いただければと思います。

新井:最初に私からデザイン依頼時のオリエンについてご説明いたします。まずご説明したのは、このビールのストーリーからです。今回の商品に使用するソラチエースは北海道岩内町において野生のホップが発見され、同空知郡上富良野町で品種開発され誕生します。そして「SORACHI ACE」としてサッポロビールより世界に発表されました。ヒノキやレモングラスのような香り高い個性的なホップは、海外で高く評価されました。ですが日本では無名のままで、私がドイツに留学したときにソラチエースの話題が出た際、恥ずかしながらサッポロのホップだということを知りませんでした。そして私はこの伝説のホップを多くの日本人に伝え、気軽に飲めるような状況を作らなくてはいけないと心に決めたのです。日本からアメリカへ渡り、そこで世界に認められたソラチエース。誕生から35年の時を経て、日本で新しい商品として発売するのが今回の商品、「SORACHI 1984」です。このストーリーを踏まえ、デザインに求めたのは「日本らしさ」をもった凛とした力強いパッケージでした。ですが「日本らしさ」を表現する方向性にも色々あります。今回は屏風のような煌びやかな世界観や、伝統工芸品のような繊細な世界観ではなく、わびさびを感じるようなシンプルな強さを出した王道感のあるパッケージをお願いしました。それでは実際にデザイン案をご覧いただきながらお話しいただければと思います。柚山さん、お願いいたします。

柚山:皆さんのお手元にもあるSORACHI 1984のデザインですが、ここまでたどり着くのにはかなり紆余曲折がありました。はじめにご提案したものは、完成品とはまったく違うデザインばかりです。初回のプレゼンでは「日本らしさ」への様々なアプローチや王道感、ビールのシズル。あらゆる面からデザインの方向性を探っています。ご覧いただいているのは一部ですが、シンプルかつモダンなマーク化をした案、鮮やかな色を使用した案、王道のオーバルをあしらった案などです。最初の時点では現行パッケージのようなホップをメインにあしらった案はありませんでした。この段階でホップは、ほんの少し飾りとして登場しているくらいですね。

新井:ありがとうございます。田中さんはこのプレゼンを受けて、どう考えていましたか?

田中:パッケージデザインを依頼する中でも「SORACHI 1984」は表現の範囲をしぼったオリエンをさせていただいたのですが、そんな狭い範囲の中でもかなり広げて提案いただいたと思っています。そして、和が強すぎて偏ったデザインになっていないか、長く生き残っていける商品であるか、という観点で見ていました。今ご覧いただいているデザイン案は実は2回目、3回目のプレゼン内容も合わさっているものですが、どの案もそういった視点で絞っていければと考えていました。

新井:ありがとうございます。我々のオリエンを聞いて白井さんはどのように感じてデザインされましたか?

白井:私は最初のオリエンを聞いて、かなり和のテイストを意識して制作していました。例えば書をモチーフにした案だったり…案が絞られていくにつれ、和に寄りすぎた案から離れ、和とのバランスを探っていけたなと思っています。

新井:ありがとうございます。デザインをする際の「表現したいこと」と「どれだけお客様に認めてもらえるか」のバランス。どこまで攻めるか。またはどこまでで引くかという実例を、生々しい形でご覧いただけたかと思います。それらを踏まえた上での最終段階がこちらです。柚山さんお願いいたします。

柚山:最終段階では、アイコン化の可能性を探りました。言い換えれば「現代におけるホップの家紋」を作ろうという試みです。とは言え表現は様々。ホップをもっと抽象化した案だったり、もっと具象的なホップの表現を当て込んでみたり。ようやく見覚えのあるホップのデザインが出てきましたね。ここまで来るとかなり最終形に近づいています。象徴的なアイコンとしてホップを見せるというのが今回のパッケージの大きなポイントです。パッケージを覚えてもらうことはもちろんなんですが、「ホップに特徴のあるビールなんだ」ということをワンビジュアルで表現することが目的です。

柚山:また細かい話ですが、もうひとつ重要なことが。お気付きの方もいるかもしれませんが、最初のパッケージデザイン案では「伝説のホップ ソラチエース」というキャッチコピーが入っていました。ですが、最終段階では「伝説のホップ」と短くし、「ソラチエース」部分はSORACHI 1984という英文商品名に任せる変更をご提案しました。これは非常に大きな変更です。「伝説のホップ」を強く言い切ってしまうことは、ホップをアイコン化するということと同じぐらい重要なことだったと思っています。

柚山:そうして、田中さんと新井さんに最終的にセレクトしてもらったのがこのふたつの案。ホップアイコンのデザイン案にするのか、別の案にするかは実はものすごくせめぎ合っていました。どちらの方がよりSORACHI 1984に相応しいか。世の中にどう受け取られるのか。思案の結果、この2案を調査にかけることとなりました。新井さん、この2案の評価はどうだったんでしょうか?

新井:実はこの2案には、あまり大きな評価の差はなかったんです。ですがビールといえばホップという「わかりやすさ」の点で、今皆さんのお手元にあるホップの絵柄が入った案に決定したという経緯です。

柚山:実は完成品のホップにはうっすらエースの「A」がいるんです。これは新井さんの強いこだわりで、「ただのホップではなく、これはソラチエースである」ということを表現したいとの思い。ソラチエースのアイデンティティとも言えますよね。

新井:そうですね。最終のデザインについて、田中さんはどうですか?

田中:最後に調査にかけた2案については、社内でも意見が割れていたんです。社内でも別案で行こうという意見もあったりしました。SORACHI 1984には日本で生まれアメリカで有名になったホップを使っているというストーリーがあります。でもストーリーを知らないお客様にもSORACHI 1984を飲んでもらおうと考えた時、ホップのアイコン案の方が相応しいと感じました。ビールというのは金色を綺麗に見せると、より美味しそうに見えます。また、スタイリッシュすぎるとどんな味かがわかりにくくなってしまいます。それらを踏まえ「ビール」を感じてもらうために、「白と黒と金」という絞った色の構成でホップのゴールドを目立たせていくのがいいと思いました。何百人というお客様にもアンケートを取った結果、広く長く愛されるデザインは具体的にわかりやすいホップのデザインなのかなと。そしてソラチエースの「A」は大きく目立つように入れるのではなく、少しだけ違った金色で表現し、隠し味として入れ込みました。そういった経緯を経て、今ご覧いただいているデザインに仕上がったんです。

新井:ありがとうございます。ひとつのパッケージデザインが世に出る裏には「何が実現できて」「何が実現できなかったか」がたくさんあります。そんなことを気にかけて、新しい視点でパッケージデザインを見ていただくとまた、面白いかもしれません。
それでは改めて、今日お話しいただいた3名の方、柚山さん、田中さん、白井さんありがとうございました。

P.K.G.Tokyo ディレクター:柚山哲平

COLUMN

人知れず消えてゆく、美しい紙について。

2019.08.15

『カラペラピス(菊判 25.7kg)』という、かつて、一目見て「ハッとさせられた美しい紙」が生産終了したという情報を目にしました。すでに在庫限りということなので、興味のある方は是非一度、紙見本を手にするなり、竹尾見本帖へ足を運ぶなりして実物に触れ、すでに希少となったこの紙を体感してみて欲しいと思い、これを書いています。

その紙は、極薄の『カラぺ(現・tカラぺ/菊判 11.3kg)』の黒をベースに、表面に輝度感のある粒子が塗工されていて、深い色合いと鈍く光る質感を持っています。「ラピス」という、ラテン語で“石”という意味の名が付け加えられていることが表すように、それはあたかも鉱物がごく薄くスライスされたような、あるいは金箔のように極限まで延ばされた姿のような、通常の紙とはまるで異なるマテリアルを感じさせてくれます。 実は過去に、この紙に着目し作品をつくる機会を得ることがありました。作品の構想に相応しい紙を探していたら『カラペラピス』に辿り着いたという順序が正しいかもしれません。その構想とは、紙を「織る」という工程を手工芸的に追求しようという試みで、その工程を経ることでどれだけの価値が生まれるのかを見てみたいというのが一番の狙いでした。

大判のカラペラピスから、下ろし立ての鋭利なカッターナイフで5mm幅の帯にスライス。か細い一本一本の帯をピンセットで優しく、しかしきっちりと交差させてゆく。少しでも気が緩めば、帯は等幅にカットされず、折り目がつき、破れる。それほどの繊細な紙を、どんなにスピードを上げても限界のある手仕事で数時間かけて織り込んでゆく果てしのない作業。それは時間を価値ある形に変換する手工芸そのものの体験でした。そうして仕上がった姿は、織り目によって微かな起伏と重量感を帯び、一枚の紙とは異なる“たわみ”の質感が美しいものとなりました。

日本では、工芸品をはじめ内装の建具や照明などに代表されるようなプロダクトとしての紙の用途が多岐に渡ります。実際、昔ながらの日本の家は木と紙でできていたといっても言い過ぎではないでしょう。時を経て、昨今では情報メディアとしての役割にひと息ついた感のある紙という素材ですが、かつてのようにマテリアルとしての価値に向き合うことが増えれば、カラペラピスのような美しい紙が人知れず消えてゆくようなことも少なくなるのかも知れません。

P.K.G.Tokyo : 天野和俊

COLUMN

サッポロビール YEBISUから、復刻特製ヱビスが発売しました!

2019.07.05

サッポロビール YEBISUから、復刻特製ヱビスが発売しました!

P.K.G.Tokyoがパッケージデザインに携わらせていただいたサッポロビール YEBISの「復刻特製ヱビス」が発売されました。

現在のエビスビールの原型となった1972年のヱビスビールを缶で復刻デザインしています。

当時の熱処理製法が再現された限定醸造のヱビス。

ぜひお楽しみください。

■ サッポロビール 復刻特製エビス特設サイト

http://www.sapporobeer.jp/yebisu/yebisu_fukkoku/

■ 商品

350ml, 500ml

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