P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

NEWS

『パッケージデザインコンテスト北海道2018』受賞

2019.06.20

『パッケージデザインコンテスト北海道2018』にて、P.K.G.Tokyo 天野和俊「じっくり、乾燥鍋。いしかり」がグランプリを、横田栞「真鱈のぽんたら」が奨励賞を受賞いたしました。このコンテストは、北海道内の中小企業から実際に販売されている10商材をお題とし、全国からデザインを募集。受賞作品の商品化に向けたフォローアップを行います。

今回グランプリに選定された乾燥石狩鍋セットも商品化が決定しており、ゴールデンウィークに発売となりました。

天野和俊「じっくり、乾燥鍋。いしかり」 横田栞「真鱈のぽんたら」展示会・表彰式
2月23日~28日に札幌文化芸術交流センターで開催された展示会では、全国からの応募作品を多数展示していました。https://www.hkd.meti.go.jp/hokip/package2018/package.html

COLUMN

デザインの世界では無視できない「文字」と「ロゴタイプ」の話。

2018.01.27

決して大げさな表現でなく、私は人類史上最高のデザインは「文字」だと思っています。「文字」がデザイン?文字は文字でしょ?という方もいるかと思いますが、図形をルールに従って並べコミニュケーションをとるという行為は、紛れもなくデザインによって成り立っているもの。人類が有史以来、切磋琢磨して編み出したデザインのひとつと言えます。長くグラフィックデザインに携わっていると、如何に書体というものが重要かがわかってきます。言い換えれば、デザイナーにとって文字を組むということや書体の成り立ちを知ることは、基礎としてある程度は勉強しておかなければならないということでもあるのです。

かく言う私も大学で書体の授業をかじった程度で、プロのデザイナーになるまで書体の知識はあまりありませんでした。ですが、デザインの世界を知れば知るほど、書体や文字組の重要性を感じざるを得ないのです。難しくとらえる必要はありません。可愛い文字、綺麗な文字、かっこいい文字はそのままレイアウトの可愛さ、綺麗さ、かっこよさに繋がります。加えて、文字の大きさや文字間・行間などのマージンをコントロールできていないものは、非常に読みにくい。逆にコントロールできているものは美しく読みやすい。基本はこれだけです。これは文字が使用されているものすべてに当てはまります。
お持ちの家電の操作パネルを見てください。そうですね、例えば洗濯機。「洗濯」「脱水」などの表示が文字で入っていると思います。使われている書体や大きさ、見やすさはどうでしょうか?得てして最新型の美しいフォルムとは裏腹に、あまり頓着されていない文字の扱いをよく見かけます。まさに画竜点睛を欠く。形と文字を切り離して考えた結果です。違う例を挙げてみましょう。例えば駅。看板やサイン、路線図に至るまであらゆる場所で文字を見かけます。注目して見ると、遠くからでも可読性の高い文字がセレクトされ、分かりやすいレイアウトがなされているはずです。このように身の回りには文字があふれています。駅のサイン、交通標識、商品のパッケージにもたくさんの文字がレイアウトされています。つまり書体と文字組をコントロールすると言うことはグラフィックの世界の話だけでなく、すべてのデザインに共通して必要なことなのです。



それほどデザインと切っても切れない文字。その最たる例のひとつが「ロゴタイプ」と言えます。企業、ブランド、商品、サービス、あらゆるものが「ロゴタイプ」として表現されています。余談ですが、一般的にロゴと省略されて言われているものは正式には「ロゴマーク」で、ロゴマークはシンボルマークとロゴタイプから構成されることが多いです。もちろん皆さんご存知の通り、ロゴタイプのみのロゴマークもたくさん存在します。
数えだしたらきりがないほど、世の中にたくさん存在するロゴタイプ。一見、既存の書体に見えるものでも、実はアレンジしていたり、既存の書体を下敷きにしながらオリジナルのロゴタイプとして再構築されたものがほとんどです。もちろん、まったくのゼロから発想することもありますが、概ねロゴタイプには何かしらのルーツがあると言っても過言ではない。それらルーツをお手本に改良したり、趣旨に沿ってアレンジしていくことはロゴタイプ開発の最初のステップと言えます。よく知られている例で言えばチョコレートの「GODIVA」。このロゴタイプは「Trajan」という書体がベースになっていることで有名です。ローマの石碑に刻まれた文字から生まれたこの書体は、チョコレートの老舗を表現するのに最適だったのだろうと想像できます。

ここで実際の制作事例をひとつ。これは靴のリブランディングの際に制作したロゴタイプです。たくさんの案の中から「Copperplate Gothic」という書体をオリジナルに持つ案が採用になりました。「Copperplate Gothic」は国内外問わずよく見かける書体で、独特のオーセンティックな雰囲気があります。上が「Copperplate Gothic」そのまま。下が最終的に完成したロゴタイプです。ぱっと見、似ていますが、よーく観察すると結構違う。完成形はオリジナルよりもややエキスパンドされた形。またBとFだけ微妙に大きいスモールキャップスになっています。名作書体の特徴を活かしながら、より安定感・安心感ある「ブランドの顔つき」を表現しています。ほんの少しの差かもしれませんが、よりそのブランドが持つ個性を引き立たせるため、ロゴタイプはデザイナーたちによって磨かれ続けています。

完成したロゴタイプの設計図はこんな感じ。セリフ(飾り)の大きさや文字の太さなど、まったく新しい設定の書体に生まれ変わっています。書体制作は錯視との戦い。一貫したルールの設定と、それを崩す見た目優先とのバランスの取り方で作り手の個性が出ます。


最小使用サイズで箔押ししても、ロゴタイプが綺麗に再現できる太さや大きさの設定に。この案件では担当者(靴のデザイナー)の要望を踏まえ、靴に配置される際の最適な表現サイズの設定もしました。ロゴタイプ開発ではコンセプトを表現することや見た目の美しさだけでなく、技術的な条件をクリアすることも必須事項です。

このように様々な由来を持つロゴタイプ。書体デザイナーが制作した書体は、あらゆるデザインの礎になっており、別のデザイナーにさらに磨きをかけられて様々な場所でロゴタイプとして使われています。あなたのお気に入りブランドのロゴタイプ。そのルーツを探すのもまた面白いかもしれません。

P.K.G.Tokyo ディレクター:柚山哲平

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