P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

COLUMN

デザインから伝わる「使いやすさ」の正体

2020.10.08

お店の入り口で押して開けようとしたドアが引き戸だったり、
ガラス張りの建物の入り口が見つからず困ったり、
飲料マシンの操作ボタンを間違って押してしまったり、
日々の暮らしの中で「何気ないミス」を経験した方も少なくないのではないでしょうか。

「アフォーダンス」は、アメリカの心理学者J・Jギブソンが「afford/与える、提供する」という意味から造語した、物理的なモノと人の関係を指した認知心理学における概念です。
J・Jギブソンは「アフォーダンス」をモノの属性と、それをどのように使うことができるかを決定する主体の能力との間の関係のことであり、物をどのように操作するかに強力な手がかりを提供すると定義しています。

コップの取っ手が「持つ」という動作をアフォードしている。
ドアに取り付けられた平らな板は押すことをアフォードしている。
ノブは回すこと、押すこと、引くことをアフォードしている。
小さな細長い穴は何かを挿入することをアフォードしている。

知覚されたアフォーダンスは、どんな行動を取りうるかを
表示や説明の必要なしに思い描く助けになるという考え方です。
回しやすい蛇口の形状や、操作をストレスなく行えるボタンのスイッチ、
押すと引くのサインが無くても簡単に開けられるドアの引き手。
意識しなくとも、自分の求める動作が自然と出来ている状態です。

パッケージにおいても、このような面から様々な包装材の工夫がなされています。
例えば、調味料のキャップ。開け口の小さな出っ張りが指の引っ掛かりを作り、
ワンアクションで開けられるようになっています。
また、ゼリーやヨーグルトのカップ、ハムやベーコンのフィルムの開け口を教えてくれる小さなつまみ。
このようなパッケージの「アフォーダンス」は一見何気ないものですが、
日々の暮らしをとても快適にしてくれるのではないでしょうか。

しかし、一方でパッケージに限らず、過剰な機能を増やしすぎたために
返って操作が困難になり「使いにくく」なったというユーザーの声も多く聞かれます。

人々が潜在的にモノを不自由なく使うためのアクション。
それを起こさせるためのデザインの構造や仕組みとはどのようなものなのでしょうか。
「使いやすさ」の正体のヒントを元に、今の時代本当に求められていることは
何なのか。これからも考えていくことが必要だと感じました。

「誰のためのデザイン?」
-D.Aノーマン(新曜社)

「論理的思考によるデザイン
造形工学の基本と実践」
-山岡俊樹(ビー・エヌ・エヌ新社)

P.K.G.Tokyo 大西 あゆみ


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