P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

INTERVIEW

ロッテ×P.K.G.Tokyo ブランドを育てていくために必要なこと *後編

2024.09.27

この記事はJPDAのWEBマガジン『ぱっけーじん』からの転載記事です。(https://packajin.jpda.or.jp/brand_lotte_2/)2024年7月26日掲載

 

「ロッテ プレミアムガーナ」がブランドとして立ち上がり、4年目を迎えます。ブランドをどのように育ててきたかを、株式会社ロッテの担当者とP.K.G.Tokyoの柚山さんが振り返り、成功した要因の分析や課題をどのように解決してきたかを話します。

前編はこちら。

取材・文:大島 有貴 撮影:唐 鸿plana inc.

 

プレミアムガーナの本質的な価値を、社内に伝播していくためのコミュニケーション

 

──前編では主に、ブランド構築のプロセスについてお伺いしましたが、販売営業の部署にはどのようにブランドが受け取られていたのでしょうか。

 

山口:大前提として、売上利益を上げるということは、とても大切なことですが、「ロッテ プレミアムガーナ」(以下:プレミアムガーナ)の本質的な価値は消費者に「ご褒美時間」を提供することだと考えています。それゆえ、営業部署には、ストレスフルな今の社会だからこそ、たくさんの人へ、このブランドの価値を伝えていきましょうとコミュニケーションをとりました。社内で一気通貫した認識を持つ必要を感じていたからです。

弊社では年2回、全国の社内の営業担当向けに今後のブランド戦略や新商品についても勉強会を行います。私がブランド担当として、ブランド展開を通して届けたい価値を直接伝える機会です。今年の春夏展開の際には、P.K.G.Tokyo(以下:P.K.G.)さんにご協力いただき、デザインに関する意図や思いを文章にまとめていただき、資料として営業担当に共有しました。勉強会で、デザインの背景を共有できたのは初めての試みでしたので、良い機会だったと思います。私は以前、営業担当でしたので、営業の視点に立った時にブランドの裏側のストーリーを知れることは、お客様と話せる話も増えますし、個人個人の士気も上がるのではないかと考えました。

石井:勉強会に参加した営業担当から私に、デザインの意図が理解できてとても良かったという声が届いております。商品展開として何種類もの商品を担当していても、これまではデザインの詳細を深掘りして説明する機会はありませんでした。ですが、勉強会を通して、私たちが最終的なデザインにたどり着くまでにブラッシュアップしたプロセスを、たくさんの不採用となった別案も含めて山口が共有してくれたのです。これをきっかけに完成したデザインの裏側にある意図を理解してもらうことで、私たちの熱量が営業担当に伝播し、「売りたい」という気持ちになってくれたと感じています。本当に理想的な形で営業へとバトンパスができていると思いました。

柚山:人が「頑張ろう」と思うのは、自分のためというよりも、誰かであるためのことが多いですよね。ロッテさんの社内でのコミュニケーションが密になったことでブランドの通念が共有化されたと感じました。もともと営業の経験がある山口さんだからこそ、一種、通過儀礼的になってしまう勉強会という機会を最大限に活かされたのだと思いますね。

トーン&マナーは解釈の仕方によって、変化への許容が生まれる

 

──これからも「プレミアムガーナ」がブランドとして続いていくわけですが、どのようなことが課題だと感じていますか。

 

柚山:やはりデザイン面において、マンネリ化してしまう可能性があるので、石井さんと頻繁に議論を重ねています。具体的には、ブランドとして変えて良い部分と、そうでない部分がどこであるのかの線引きを決めることに時間を割くことが多いです。トーン&マナーという言葉はブランドを議論する時によく使われる言葉だと思うのですが、意外と解釈が難しいと思っています。この言葉を「ルール」と解釈してしまうと、絶対に守らなければいけない決まり事になってしまいます。本来はトーンもマナーもブランドの現在位置によって変化していくもの。人が成長するにつれて大事にしているものが変わるように、ブランドにもその時に大事にするべきものがあります。ただ、それはブランドに対しての理解と、これまでの道のりを知っていることが前提。守らないといけないものと、変えていいものを線引きすることができるリテラシーがあってこそだと思います。私たちは、そのリテラシーがあるからこそ、これからも変化をしていけると思っています。

石井:実は、デザインでこれだけ高級感や王道感を担保しているにも関わらず、「プレミアムガーナ」におけるデザインのフォーマットと呼べるものがありません。それゆえ、関わる誰もがブランドへの認識を同じ視座で持つことが重要です。それができているので、変化を受け入れられるのだと思います。実は、今年4月に発売した春夏展開のデザインはこれまでのトンマナから大胆な変更をいたしました。これまで通り重厚感のあるものを踏襲したデザインも検証をいたしましたが、4年目を迎えるということもあり、新しい挑戦的なデザインを選びました。また、チョコレート市場では、春夏はどうしても売れ行きが下がる傾向があります。そこで山口がお客様への調査を行い、打開するための糸口として見つけてくれた一つの要素が「カラーリング」でした。そこから、ブランドのイメージである高級感をどう担保するか等また議論を尽くし、今回の春夏展開のパッケージデザインが完成いたしました。ブランドとしては、かなり大きな変化でしたので個人的には発売するまで、お客様に受け入れていただけるか心配でした。ですが、たくさんの検証、議論を重ねた甲斐もあり、春夏展開の売れ行きは好調で、嬉しい限りです。

柚山:実は、だいぶ前から今回のような春らしいペールトーンは、チョコレートのパッケージとして相応しいのかという検証を続けていたのです。今回、ブランドの認知度やこれまでの実績から考えて、4年目の今ならふさわしい色だと判断してチャレンジしました。仮にこのデザインが2年目に出ていたとしたら同じ結果にはならなかったかもしれないですね。ロッテさんとのお仕事は毎回、石井さんから何かしらの課題をいただくようにしています。今回はこの課題を解決したいので一緒に考えてくださいと。そういう課題に一緒に向き合うからこそ、目線を合わせながら、変化を許容していけるのだと思います。

2024年春夏展開のパッケージ。山口さんの調査によって、プレミアムガーナは毎回季節限定で今しか買えない商品にも関わらず、通年商品に見えてしまっているという課題があがった。そのため「季節限定」を強調するようなカラーリングや撮影方法、コピーライティングなどを議論しデザインが決定している。

 

さらにブランドを羽ばたかせるために必要なこと

 

──これから「プレミアムガーナ」をどのようなブランドにしてきたいとお考えですか。

 

柚山:私個人としては「プレミアムガーナ」をグローバルブランドにしていきたいと思っているのですが、どのようにお考えですか?韓国を中心としたアジア圏ではすでに販売していますが、欧米に挑戦するのも面白いのではないかと思うのです。そのためには何が足りないのかということを考えていきたいですね。

もちろん、まずはガーナミルクチョコレートを世界的に広めてから次にプレミアムガーナを、という順序がセオリーだとは思うのですが、いっそ「プレミアムガーナ」から世界の人に知ってもらうというのも良いのではないかと考えています。ただ、チョコレートの本場に「プレミアムガーナ」が入り込んでいくハードルの高さはあるので、例えば、抹茶フレーバーなど「日本らしさ」を盛り込んだ商品から認知を広めていくなど何かしらの工夫が必要だとは思います。

山口:いいですね。ヨーロッパは、高級チョコレートが普通にスーパーに並んでいる文化があるので、挑戦できる土壌はあるのではないかと思います。また、ヨーロッパで認められた「プレミアムガーナ」として他の国に訴求していく形を作れるので、とてもいいと思います。ガーナのルーツはスイスなので、60年間、日本で育てたガーナをヨーロッパでまずは「プレミアムガーナ」で勝負させるということを検討しても良いかもしれません。

石井:楽しみですね。デザインに関しては、どんなにこのブランドが大きくなっても、考え方の軸は変わらないと思っています。今まで、このブランドと向き合ってきて私が学んだことは、メーカー目線でデザインを考えても上手くいかないということです。調査を通して、多くのお客様の声をいただけることもあり、消費者目線で考えるようになってから、デザインがはまった感覚があります。これから、海外進出を考えた際にも、私たちの「伝えたい」という強く純粋な想いだけでなく、客観的な視点で考え続けなければならないと考えております。P.K.G.さんが、常に伴走してくださるからこそ、その客観性が保てるのだと思います。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします。

柚山:パッケージデザインとは、消費者のためにデザインするものです。このお仕事ではロッテさんと共にブランドを通して消費者とも対話できていると感じています。自分たちでブランドを育ててきた実感があることが本当に素晴らしい。こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。

INTERVIEW

ロッテ×P.K.G.Tokyo ブランドを育てていくために必要なこと *前編

この記事はJPDAのWEBマガジン『ぱっけーじん』からの転載記事です。(https://packajin.jpda.or.jp/brand_lotte_1/)2024年7月25日掲載

 

私たちの生活の周りでは、毎年数多くの新商品が生まれています。その新商品がブランドとして定番化され、長く愛される存在となるには、その過程でどのような努力がなされているのか。「ロッテ プレミアムガーナ」のブランドの開発と成長に関わってきた株式会社ロッテの担当者とP.K.G.Tokyoの柚山さんを交えてのインタビュー対談です。

取材・文:大島 有貴  撮影:唐 鸿plana inc.

「ロッテ プレミアムガーナ」とは

今年、60周年を迎えるロッテガーナブランド初のサブブランド。「一日の終わりに、ご褒美時間。」をコンセプトに、高級感や特別感を感じる商品だ。202110月に発売し、商品の美味しさはもちろんのこと、洗練されたパッケージデザインにも注目が集まっている。

cl. 株式会社ロッテ
cd. 石井美希(株式会社ロッテ)
ad. 柚山哲平(P.K.G.Tokyo株式会社)
d. 白井絢奈(P.K.G.Tokyo株式会社)

 

(左)株式会社ロッテ マーケティング本部 ブランド戦略部 ガーナブランド課 山口 洸也さん(中央)株式会社ロッテ マーケティング本部 情報クリエイティブ部 デザイン企画課 石井 美希さん(右)P.K.G.Tokyo CCO(Chief Creative Officer)柚山 哲平さん

 

今まで培ってきた「安心感」と、生活者のニーズを満たした「プレミアムガーナ」

 

──「ロッテ プレミアムガーナ」(以下:プレミアムガーナ)発売から4年目を迎えるとのことですが、ブランド立ち上げの経緯を教えていただけますでしょうか。

 

山口:ガーナミルクチョコレート(以下:ガーナ)は1964年に誕生した弊社チョコレート製品の中で第一号の商品です。ミルクチョコレート発祥の地、スイスの技術者を日本に呼び、高品質のチョコレートを完成させました。そのガーナが、今年60周年を迎えます。産地であるガーナの方々のカカオへの情熱と、消費者へ美味しいチョコレートを届けたいという弊社の熱い想いを重ねて「ガーナ」という商品名にしました。その想いはパッケージにも反映されており、情熱を赤色のパッケージで表現しております。当時、チョコレート商品に社名を入れることや、茶色をパッケージに使うことが通例でした。そんな中、品質へのこだわりが伝わる商品名と赤色のパッケージが、大変注目を集めたとのことです。

今回お話する「プレミアムガーナ」は、202110月に発売することになるのですが、その1年前頃から様々な検討、調査を行っておりました。当時はコロナ禍で、生活者にストレスが多い生活環境がある状況です。実際に調査を行ったところ、ご褒美・特別感へのニーズの高まりに加え、買い物に失敗をしたくない、そして食品としての安心感がニーズとしてあがりました。そこで、長い間ご支持いただいてきたガーナが安心感を担保しながらも、高級感を兼ね備えた「プレミアムガーナ」の開発が進んでいくことになりました。ガーナとして、サブブランドを作ることは初めての試みでした。その時はまだ「プレミアムガーナ」というネーミングも決まっていない状況でしたが、以前からデザイン開発でお世話になっていたP.K.G.Tokyo(以下:P.K.G.)さんに早い段階で、ご相談させていただいた経緯があります。

柚山:そうですね。商品の企画当初から関わらせていただきました。ネーミング案をP.K.G.からも出させていただいた上で、調査を行い、その結果を元にロッテさんと議論を尽くし、最終的には「プレミアムガーナ」という万人にとってわかりやすい名前に決定しました。実は、プレミアムガーナには、その前身と言えるガーナのプレミアムラインの商品が存在しました。その中でも、弊社が携わらせていただいた「ガーナ マリアージュ <ストロベリー>/<ブルーベリー>」(20204月発売)でのシンボリックな表現が、大胆で高級感があると評価され、翌年の「プレミアムガーナ」誕生へと繋がっていきました。

 

「一日の終わりに、ご褒美時間。」という価値を伝えつづけ、育てるために

 

──発売後、売上を含めたブランドの成長はどのようなものでしょうか。

 

山口:発売前から、社内の期待値はとても高かったです。高級感を感じながらも、ガーナブランドであることがちゃんとわかり、安心感と美味しさが担保されていることがデザインに反映されていました。一つ懸念点として上がっていたのが、ガーナのブランドカラーである「赤」が使われていなかったことでした。これまで大事にしてきたブランドカラーである赤色を手放して、果たしてガーナと思ってもらえるのかと。ですが、実際に発売に至るとその懸念はすぐに払拭されました。結果的には202110月に発売したプレミアムガーナ5品は、前年品と比較して約2倍の伸び率でした。今年で4年目を迎えるブランドですが、発売当時から販売数を年々増加させ順調に成長しています。さらにラインナップの充実やコラボレーション展開などを経て、今や誰もが知るブランドに成長しました。

柚山:ブランドが着実に育ってきているのは、とても嬉しいことです。当時のデザインの裏話ですが、立ち上げ当初は「プレミアムガーナ」という名前をしっかり覚えてもらうために、パッケージデザイン上でロゴを大きくわかりやすく配置していました。その後、発売から時間が経ち、ブランドの認知度が上がっていくにつれて、ロゴサイズは少しずつ小さくしていく傾向にあります。その時々で、ブランドの受け取られ方は変わっていくので、世間からの認知度に合わせてデザインも変えていく必要があるのです。石井さんとは、そういったことを始めとしてとにかく議論を尽くしてきました。

石井:そうですね。近年、コラボ商品も増えていく中で、毎回ロゴの大きさをはじめとした見せ方について柚山さんと時間を割いて、とことん議論をしています。私はブランドの立ち上げ2年目からデザインを担当していますが、2年目はどのブランドも苦戦しがちです。そのタイミングで前任からバトンタッチされたので、個人的にも悩みながら進んできた経緯があります。特に、コンセプトである「一日の終わりに、ご褒美時間。」がどのようなお客様にもデザインを通して伝わるよう模索してきました。例えば、「ご褒美時間を過ごしたい」と思われているお客様にとって、過剰な情報は必要ではないのではないかと考えました。そこで、文字情報を精査し、美味しさがダイレクトに伝わるシズルの表現にこれまで以上にこだわることで、シンプルでリッチな気分が味わえる堂々としたデザインが完成いたしました。

柚山:やはり、クライアント側の意向として、パッケージの中にたくさん文字情報を入れたいと思うのは普通だと思います。それは商品に対しての作り手の熱意ですので、至極当然だと思うのです。しかし、ややもするとセールス的で、一方的だと取られてしまう可能性があります。消費者の気持ちを慮り、情報をコントロールする。その両者にとっての通訳のような役割がデザインだと思います。石井さんはロッテさんの中にいながらも、作り手の熱意と消費者の間に立ち、社内に真摯に働きかけてくれたからこそ、今のシンプルで高級感のあるデザインが実現したと思うのです。関わるメンバーが等しくブランドへのリテラシーを高く保ち、周りにも波及させる行動をしてきたからこそ、ブランドがうまく育ってきているのだと感じています。

 

対話し、議論を尽くすことのできる関係性を築く重要性

 

──なぜ、メンバーが等しくブランドに対するリテラシーを高く持てたとお考えですか。

 

柚山:うまくいった場合も、そうでない場合も「なぜそうなったのだろう」というロジカルな議論ができ、お互いの感情論で仕事をしないことだと思います。例えば、写真のレイアウトやカラーリングなど、一体何が起因して反応が良かったかを分析しながら、商品の売れ行きに一喜一憂することなく、次なる商品の議論を行ってきました。

石井P.K.G.さんとの議論は、いつも皆さんが忖度なしの本音で話してくださります。それゆえに、こちらも本音で対峙しなければ失礼だなと感じるところがあり、そのような関係性で議論し合えることがとても心地よいです。社内のデザイン担当が1人なので、P.K.G.さんがもはや社内の人間なんじゃないかという感覚がありますね。もちろん、意見がぶつかり合うこともあるのですが、そういったことがあるからこそいいアウトプットができていると思います。腹を割って話せる関係が、成功要因の一つだと感じています。

柚山:弊社のパーパスには「対話」という言葉が入っています。問題の本質について時間をかけて一緒に話していくということです。また、私個人のデザインへの考え方は「話せばわかる」というスタイル。基本的にクライアントの「こうしたい」というオーダーの裏には実は社内の事情などによる「こうしなければならない」という本音が隠れていると考えています。その事情を相談していただければ、「じゃあこのような別の方法がありますよ」とこちらも抜本的な提案ができるのです。ですが、その事情がわからないと代案も出せない。本音を喋っていただくことで、状況を理解した上で最善の道を一緒に探せるのです。ロッテさんとは日頃から本音で議論させていただいているので、本当にいい関係が築けたと思っています。

後編に続きます。

INTERVIEW

エスビー食品×P.K.G.Tokyo 「ものづくり」の現場で作用するデザイン

私たちの生活に欠かせない「食べること」。普段、私たちは食品を手に入れるためにスーパーマーケット等に足を運びます。ですが、そこに並ぶ製品ひとつひとつにある「ものづくり」のストーリーを感じることは、少ないのではないでしょうか。今回は、食卓を美味しく、豊かにすることで、幸せな日常をつくる商品を世に送り出し続けているエスビー食品株式会社の商品企画担当者に話を伺いました。P.K.G.Tokyoがデザインで関わった「まぜるだけのスパゲッティソース ご当地の味」のものづくりのストーリーをお送りします。デザインは、どのように「ものづくり」の現場に作用するのでしょうか。

取材・文:大島 有貴
撮影:唐 瑞鸿(plana inc.)

 

まぜるだけのスパゲッティソース ご当地の味とは
2019年に発売した、ゆでたスパゲッティにまぜるだけのパスタソースの新シリーズ。定番の「生風味たらこ」「ペペロンチーノ」「バジル」に続き、日本各地で親しまれるご当地素材を使用し、その土地ならではの味を表現した商品である。


AD:白井絢奈(P.K.G.Tokyo)
D:福田稜子(P.K.G.Tokyo)
IL:白井絢奈、福田稜子

 


エスビー食品株式会社 マーケティング企画室 リーダー 眞榮城 有里さん

<プロフィール>
新卒でエスビー食品入社後、7年間スーパーマーケット等の販売店向け営業を担当。その後、2016年からマーケティング企画室へ。趣味は旅行と映画鑑賞。

 

今までにない、長く愛されるパワーのある新たな商品をつくりたい
──まぜるだけのスパゲッティソース(以下:まぜスパ)は、パスタソース商品の中でもヒット商品かつ定番商品かと思います。そんな中、今回「ご当地の味」に焦点を当てた新商品開発の経緯を、お聞かせ願えますでしょうか。

眞榮城:おっしゃるように、まぜスパは、シェアNO.1※の「生風味たらこ」を筆頭に、「ペペロンチーノ」「バジル」なども根強い人気のブランドです(※インテージSRI+ 2022年3月~2023年2月)。ですが、新しい味の商品を発売しても、定着しないという課題がありました。パスタソースの企画担当となった頃から、消費者に長く愛していただける、パワーのある商品を作りたいと考えていたのです。加えて、パスタソースの消費者には「情緒的に」訴求する方が響くのではないかと以前から感じていました。それは今までの弊社の商品には足りない要素だったと思います。また、企画を立て始めた2018年頃から東京に地方のアンテナショップが増えたり、ご当地ものが集まるイベントも多く開催されたりする中で、「地のもの」に関心が高まっている世の中の空気を感じていました。そんな中で「ご当地」をテーマにすることで、消費者に情緒的な訴求ができないか考えるようになっていくのです。私は東京に住んでいますが福岡県出身です。同じように故郷から離れて暮らす方が多くいらっしゃいます。その土地ならではの素材を商品に使うことで、「懐かしさ」を想起させることができるのではないかと考えたのです。また、ご当地に想いを馳せるきっかけとして「旅行」が挙げられるかと思います。私自身、旅行の前に雑誌を読み、あれやこれやと考える時間がワクワクして大好きです。そんな「高揚感」を商品に盛り込むことができないか。そのような想いから「懐かしさ」「高揚感」を軸として企画コンセプトが出来上がっていきました。

 

「味わう」を超えた、新しいコンセプトのパスタソースであること

眞榮城:P.K.G.Tokyoさんにデザインをご依頼させていただいた際、私から前述の経緯を含めたコンセプトをお伝えさせていただきました。そこでP.K.G.Tokyoの皆さまが、しっかりとその想いを受け取ってくださり、コンセプトが体現したデザイン案を出してきてくださったのです。自分が考えたコンセプトがしっかりと伝わったことを実感でき、嬉しかったことを覚えています。加えて、デザインに関しての修正がほぼ必要がなかったので本当に感動しました。


旅行雑誌のワクワクする温度感をご当地ごとの特色とイラストで表現した。エスビー食品企画部内には、店舗の売り場で使用されている商品棚があり、実際に商品が並ぶ場面を想定したデザイン検証が行われている。

──お話くださったコンセプトがデザインに体現されていて素敵です。スーパーマーケット(以下:スーパー)向けの商品にはない趣ですよね。

眞榮城:そうですね。今までにないデザインがゆえ、役員プレゼンでどのような反応が出るかが不安でした。実は、弊社では食品のパッケージが白背景の商品はほとんどありません。美味しさを表現する上で、味わいが薄く感じられ淡白な表現になってしまうことが多いとの理由です。ですが、プレゼンではコンセプト、味、パッケージデザインまで一貫した世界観を貫けていることを評価していただけました。商品を通して食卓に美味しさ、豊かさを届けたいという気持ちは、社内の立場を超えて共有していることを感じましたね。特に、パスタソース商品には「情緒的」な訴求が消費者に響くことを強調しました。また、説得力を生み出す上で、私自身が商品のターゲット層であることも、いい方向に作用したかもしれません。データを紐解くと、パスタソースのメインターゲットは働いていたり、子育てをしたりしている時間を効率的に使いたい女性たちです。そういった女性たちが「高揚感」や「懐かしさ」を感じて、楽しんで買って、味わっていただく。「味わう」だけではない、今までにないパスタソース商品なのです。そのようなコンセプトや意図を強くお伝えしていくことで、役員にも商品の新規性や可能性を信じてもらえたのではないかと思います。その際に、コンセプトがデザインにしっかりと体現できていることが助けになってくれました。また、素材や味の組み合わせにこだわり、コンセプトの世界観を体現した理想の味を作ることができたことも大きな要因です。

 

前例のない「ものづくり」への熱が、社内で伝播していく
──特に今回の開発で、苦労した点をお教えください。

眞榮城:実は、今回の商品に関しては「素材」に苦労しました。なぜならば、「瀬戸内」「長崎」「信州」などのご当地名を商品名に使う以上、その土地の素材を使わなければならないのです。例えば、「瀬戸内レモン&オリーブ」であれば、瀬戸内のレモンを実際に使用しなければなりません。多くの場合、ご当地素材は、地元企業が少量生産しています。弊社の商品はありがたいことに全国に販売経路がございますが、全国規模の供給量を担えるサプライヤーを探すことは容易ではないのです。なかなか難しい条件の中で、原料調達担当の方たちにはご尽力いただき、感謝しております。

──販売後の反応は、いかがでしたでしょうか。

眞榮城:いざ、販売となると商品の新規性を魅力に感じていただけるバイヤーが多かったです。私は入社して7年間ほど、スーパー向けの営業を担当していたので実感しているのですが、バイヤーの反応は商品の取り扱いを左右します。営業担当が後押しとなり、「まぜスパ ご当地の味」のコンセプトやデザインの新しさ、 エンターテインメント性が、しっかりとバイヤーに理解されたのだと思います。

 

「デザイン」が商品の妙味を体現し、たくさんの人に愛される商品に
──情熱が皆に伝播していかれたのですね。これから、眞榮城さんはどのように「ものづくり」をしていきたいとお考えですか。

眞榮城:「まぜスパ ご当地の味」は様々な人たちがバトンを繋いで完成した商品だと思っています。間違いなく、開発や素材調達、営業担当の力がなければ、商品として成り立ちませんでしたし、多くの人に届けることはできなかったと思います。そして、P.K.G.Tokyoの皆さんが、デザインでしっかりとコンセプトを形にすることで私たちの挑戦を支えてくれたのです。そのアウトプットの質がここまで高かったからこそ、商品がたくさんの人に愛されたと思っています。これからも、私は企画担当として様々な商品を作っていきますが、一緒にものづくりをするパートナーとして、P.K.G.Tokyoさんとは末長くお付き合いさせていただければ幸いです。

 

「まぜスパ ご当地の味」の情報はこちら
エスビー食品株式会社の情報はこちら

INTERVIEW

KURAND×P.K.G.Tokyo デザインとブランドのいい関係とは

P.K.G.Tokyoのメインワークである、パッケージデザイン。
今回は、氷点下で約20年眠り続けた熟成日本酒「FRESH VINTAGE the epic」のデザインとブランドの関係性の観点から、商品開発のストーリーをお送りいたします。KURAND株式会社の商品チームマネージャーの青砥 秀樹さんと、弊社ディレクターの柚山の対談形式です。
取材・文:大島 有貴
インタビュー撮影:唐 瑞鸿(plana inc.)
商品撮影:近藤 伍壱(ROBIN HOOD)

 

FRESH VINTAGE the epicとは

「FRESH VINTAGE」は、しぼりたてそのままの日本酒を-5℃の氷点下の中で長期間熟成することによって誕生した、“ビンテージなのにフレッシュ”といった、相反する新しい味わいが特徴の日本酒シリーズ。「FRESH VINTAGE the epic」は同シリーズのはじまり1本。20年間氷温熟成され、200本限定生産の貴重な日本酒である。販売価格は11万円(税込)。

<プロフィール>
KURAND株式会社 商品チームマネージャー  青砥 秀樹さん(写真右)
島根県・青砥酒造で6年間酒造りに従事し、ゼロから新銘柄「蒼斗七星(あおとしちせい)」を造り出し、日本酒業界で多くのファンを生み出す。青砥酒造を退社後にKURAND株式会社に参加し、商品チームマネージャーとして全てのプロダクト開発を担当。お酒をアップデートする、次代のプロダクト開発を手掛ける。
P.K.G.Tokyo ディレクター 柚山哲平(写真左)
2009年、柚山デザイン株式会社を設立。さらに2017年、P.K.G.Tokyoを創業メンバーとともに設立。ブランディングを中心に、ブランドコンサルティングや商品プランニング、アートディレクションからデザインまでシームレスかつ幅広く取り組んでいる。P.K.G.Tokyoでは、これまで様々なメーカーの主要商品ブランディングやパッケージデザインを手がけてきた。

 

FRESH VINTAGEシリーズ立ち上げに関わってきた経緯 

柚山:本日はどうぞ、よろしくお願いいたします。KURANDさんと弊社の出会いは、日本酒「金銀 -KEEN GUIN-」パッケージデザインのご相談がきっかけでしたね。私が担当として、御社と初めて関わったタイミングは、FRESH VINTAGEシリーズ立ち上げでした。

青砥:そうでしたね。その際に、ストラテジー策定から関わっていただいて。私どもと、酒蔵である中野BCの担当者、そしてP.K.G.Tokyoさん同席でワークショップを行っていただきました。ペルソナ設定から「FRESH VINTAGE」というネーミングに至るまで。ストラテジー策定から関わっていただけるデザイン会社さんは、他にあまりないので、とても説得力のあるデザインに仕上がったと思っています。

FRESH VINTAGEシリーズ。
デザインに関するストーリーはこちらから 

 

肌感覚で得てきた、デザインとブランドの関係性の大切さ。

柚山:KURANDさんも、全国の酒造会社と提携し、商品企画、製造、物流、販売までを一気通貫するプラットフォームをつくられていて、他に例がない会社さんだと思っています。近年ですとオンラインでの「酒ガチャ」も話題になりましたよね。

青砥:今まで商品開発から関わり、生み出してきたお酒の数は500種類ほどあります。1本1本のお酒に合わせて、提携酒蔵との密なコミュニュケーションをとり、ひとつひとつのブランドを丁寧につくりあげているのです。
加えて、オンライン酒屋「クランド」や、オウンドメディアを運営しております。デジタルの活用はKURANDには欠かせないものです。「一体、何屋さんなのか?」と聞かれることが多いのですが、私たちはまず、酒屋であることがアイデンティティー。社長荻原の創業の目的はシンプルに「お客さまにお酒の魅力を知って、飲んで、喜んでもらいたい」ということ。特に、酒蔵さんがリーチしづらい若いお客さまへ伝える手段として、デジタルを使っていこうと。「お客さまに喜んでもらうため」に、様々なトライアンドエラーを積み重ねて10年やってきました。
実は、今のようなビジネスモデルになるまでには、通常の酒屋と同じように、代表的な銘柄(ナショナルブランド)を販売していた時期もありました。ですが、その方法ですと、他との差別化が難しい。そこで、さまざまな試行錯誤の後に、現在のようなビジネスモデルが出来上がったのです。今までの経験の中で、お客さまにお酒の魅力を感じてもらうには、中身の質の良さはもちろんのこと、ネーミングからデザイン、ストーリーを伝えることが大切だと肌で感じてきました。ですので、私たちは提携の酒蔵とブランド企画を共にし、ブランドの具現化としてのデザインをとても大切にしているのです。

柚山:なんだか、今の話を聞いて合点することありますね。KURANDさんとの仕事はデザインに至る過程を大切にする我々にとって、とてもやりやすかった。というのも、一緒にものづくりをする、酒蔵との議論の場に、私たちデザイナーを同席させていただいたんです。ところで、青砥さんはお酒の「造り」についても大変お詳しいですが、そこまでの知識はどこで学ばれたのでしょうか。

 

造り手と伝え手のコミュニケーションの密度

 青砥:実は以前、酒蔵の現場にいました。弊社には同じように「酒造り」に携わっていたメンバーが私含め3人おりまして、そこは強みだと感じています。というのも、製造自体は提携酒蔵に委託はしているがゆえ、酒蔵の方と対等なコミュニケーションが取れることが、1本1本に合わせたブランドづくりを強固にできると思うのです。

柚山:すごく分かりますね。デザインの世界でも、デザイナーは最終的なアウトプットのことを深く知っておく必要があります。グラフィックデザインであれば紙や印刷の知識は不可欠だし、プロダクトデザインなら使用される素材の特性や製造工程を知っている必要がある。同じように、伝え手としての側面を持つKURANDさんが、最終アウトプットを担う酒蔵と密なコミュニケーションを取れることで、いいものがつくれるのですね。

 

20年間、大切に寝かされ、眠っていた熟成酒。

青砥:「FRESH VINTAGE the epic」の製造を委託しております酒蔵は、和歌山県の中野B Cさんです。弊社とは長年の信頼関係があります。酒蔵のある紀州は温暖な気候。その気候が影響し、夏を越すとお酒が過熟状態となり、色付きや味わいに重みが出ることに長年悩まれていた。そこで酒蔵としては本当に先駆者と言ってもいいほど昔から、氷温でお酒を寝かせて熟成することにトライされてきたのです。その氷温室で20年間眠っていた酒が今回の「FRESH VINTAGE the epic」。初めて飲んだ時、「これはすごい」と純粋に感じました。このお酒を「ぜひ、お客さまに飲んでいただきたい」と。
正直、熟成酒といっても、保存状態がずさんであったりするとその価値を感じられない味であることが、よくあるのです。ですが、このお酒は大切に寝かされ、「眠っていた」という言葉がまさしくで。私たちが官能的に感じる価値と、価格といった数値的な価値がイコールであるならば、これは何としてでもやりたいと。デザインを含め、どのようにお客さまに伝えていくのかは私たちの腕の見せどころ。「ぜひ、僕たちにやらせてください」と酒蔵にお伝えしました。私たちもここまでの高価格帯のお酒を売った経験はなかったので、その時はノープランだったのですが…。そうしたら、「KURANDがそう言うんだったらいいよ」と酒蔵が快諾してくださったんです。

 

今までにないお酒だからこそ、その価値を体現したデザインを

 柚山:実は、一旦提案した別のデザイン案がありました。そこから、少し時間をおいて見返したとき、このデザインは果たして青砥さんたちが見つけたお酒のポテンシャル、価値を本当に表現できているんだろうかと。そこで、自主的に再提案させてくれないかという話をしたのです。今までにないお酒なのだから、ラベルの表現も今までにないことをやらないと、その価値には届かない。革を使った理由としては、今までにない、20年の熟成酒であることを表現するためです。時間を経ることで深まる価値を表現するにあたり、風合いの変化が楽しめる革という素材が、今回のテーマにふさわしいと考えました。ですが、やはり前例がないので、クリアしなければいけないハードルが盛りだくさんでしたね。革と酒、両方の品質保持。冷蔵輸送の際に懸念される結露など。そういった商品として乗り越えるべきハードルをクリアするため、実験を繰り返し行ってもらい、ようやく形にすることへとたどり着いたデザインなんです。


ラベルにはヌメ革を使用している。最初はやさしいベージュをしているが経年変化とともに美しい飴色になっていく。商品名など文字情報はすべて型押しで構成されており、印刷を使用しない特殊なラベルである。

青砥:具体的には、酒蔵で実際に20日間〜1ヶ月冷凍保存して、革に変化がないか、匂いなどに問題がないかという検査をしました。加えて、輸送テストも行いました。ここは、ちょっと厳しい私が出てきてしまってですね、厳格にチェックをさせていただきました(笑)。やはり高価格帯の商品なので、お客さまの手元に届いたときに、商品の価値を最大化したい。どうしても、配送時のトラブルがあったり、酒蔵の管理上の限界があったりするので、そこがきっちりと大丈夫かを確かめておきたかった。そのために、今までの商品開発の中で一番時間がかかり、1年半を要しましたね。

 

商品企画のはじまりに、デザイナーが同席することの重要性 

柚山:例えば他のクライアントに「革のデザインでいきましょう」と提案したとすると、前述のような苦労がつきものなので、普通は採用されません。ですが、KURANDの方々は「やってみましょう」と前向きに、一度飲み込んでくださるのです。みなさん、商品のストーリーをデザインに落とし込む重要性をよく理解されているのだと感じました。実は一般的なデザインの仕事は、決まった条件のもと依頼されることも多いのです。ネーミングや表現媒体も決まっていて、その範疇でデザインをお願いしますと。デザインが上手くハマれば良いのですが、マーケティング的観点で立てた仮説と、用意された条件が矛盾していることもしばしば。本当にブランドの価値を最大化したいのであれば、商品企画の段階からデザイナーが議論の場に立ち会う必要があるのではと私は考えています。仮に決定権がなかったとしても、初期の議論に参加することができれば、ボタンのかけ違えや矛盾は起こらないと思うのです。ですので、KURANDさんのように、膝突き合わせながら進めていくプロセスは、ブランドの価値を無理なくデザインに昇華させることができると感じています。

青砥:私たちにとっても、企画の最初の段階から一緒に考えていただけるデザイン会社さんは逆に言うと他にないんですよね。実は、今回「FRESH VINTAGE the epic」のネーミングは、柚山さんにご提案いただいたんです。基本的に今までの商品の名前は多くの議論の上、ほぼ社内で決めています。しかし、今回ご提案いただいた「the epic(叙事詩)」という名前。つまり時代を経て語り継がれる物語というネーミングが、熟成を重ねて味わいが増すこのお酒には相応しい名だと思いました。

 

残り1%、0.1%に違いが出る。それが「人」がやる意味ではないのだろうか。

柚山:ありがとうございます。少し唐突に話が逸れてしまうかもしれませんが、個人的な最近の興味として、AIをはじめとするテクノロジーの進化というものがあります。目まぐるしい進化の中で「人が行う表現の意味」を考えるのです。つくることから選ぶことにシフトし、条件さえ揃えば誰でも模倣できてしまう表現という渦の中で、言い換えるなら「違い」とはどうやって生まれていくのかと。

青砥:私たちの仕事にも同じことが言える部分がありますね。99%近くまでは、きっと同じ情報などのインプットをしたら、多くの人は導き出せてしまう。だけど残り1%、0.1%に自分たちが入る余地があると思っていて。それが何なのかと考えた時に、言葉に表現しようがないからこそ「個性」とか「センス」という言葉を使うんですよね。お酒造りも同じような条件、環境で造ったお酒でも「誰が」造ったかによって味の違いが出るのです。 そこが面白い。

柚山:なるほど。少しの差が唯一無二の個性を生む。面白いですね。これからもKURANDさんとは、ディスカッションしながら新しい商品を一緒に生み出していただけたらいいなと思っています。どうぞ、よろしくお願いいたします。

K U R A N D株式会社の情報はこちら

「FRESH VINTAGE the epic」の情報は こちら

 

INTERVIEW

i3DESIGN × P.K.G.Tokyo 浸透するパーパスを作り上げ、運用していくには

「パーパス」という言葉をご存知でしょうか。企業の存在意義、社会に対する宣言を意味します。P.K.G.Tokyoは「世の中のあらゆる価値をデザインで更新し、世界のすみずみへ届ける。」というパーパスを掲げています。「design」の語源はラテン語の「designare」。「計画、設計を記号にして表す」という意味。現在の「デザイン」とは、ビジネスモデルをはじめとした、目には見えないものを計画、設計することも含まれると言えるのです。

そんな意味においてP.K.G.Tokyoは「パーパスを可視化する。ブランドをマネジメントする。」を掲げ、パーパスブランディング事業Identity Tokyoを展開しています。
「社会における存在意義」が問われる時代。Identity Tokyoは、志あるブランドのパートナーとして共にパーパスを導き、パーパスを核にブランドを可視化します。今回は、共にパーパスを作り上げたi3DESIGN のデザイン本部執行役員佐々木さん、現在運用に取り組まれているデザイン本部木下さんと、P.K.G.Tokyo代表天野の対談インタビューをお送りします。
取材・文:大島 有貴
撮影:唐 瑞鸿(plana inc.)

 

策定チームの発足。プロジェクトが動き出す。

天野:本日はよろしくお願いします。i3DESIGN とのお仕事を振り返ると、最初はロゴデザインのご相談をいただいたんですよね。「パーパスから一緒に考えませんか」と私たちからご提案をさせていただきました。

佐々木: そうですね。ちょうど、そのタイミングで弊社代表の芝が会社のフィロソフィーを文章にし始めていたんです。それを原案としてまずは、全社でワークショップを開催しました。当時は社員数20名程度だったので、ちょうどこのフロアで行いましたね。

天野:芝社長、佐々木さんを中心にパーパス策定プロジェクトチームを立ち上げてもらい、そこに弊社の中澤と私が入らせていただきました。ワークショップは2部制で行ったんです。パーパスは企業にだけではなく、個人にもある。その重なりが大きければ大きいほど、その人は企業とマッチしていると考えられています。まずは2人1組になり、会社における個人レベルでのパーパスを可視化してもらいました。その後の第二部では、4、5人のグループで先ほどの個人パーパスを共有しつつ、企業のパーパスについて考えてもらいました。最後に全体で発表し合い、他チームの考えを共有するという内容です。その時に出てきた言葉に傾向はありましたよね。皆さん、「人」や「成長」を意識されていたように思います。そこから、キーワードを抽出していきました。

佐々木:そうですね。そこから芝の言葉や弊社の社風を加味しながら、パーパス策定チームで言葉にまとめていったんです。AからCの3つの案を作りましたね。Aは会社と個人の「成長」が軸に、Bは事業内容が社会にどのような「作用」をもたらすか、Cは弊社の社会における「立場」を明確にしたものでした。そこで決まった初案が「デジタルとクリエイティブの力で世界の進化を支える」という言葉だったのです。

i3DESIGNのデザイン本部執行役員の佐々木さん(左)、デザイン本部の木下さん(右)。

パーパスから落とし込み、ロゴデザイン制作へ。

天野「i3DESIGN 」の「i」はidentity(アイデンティティ)です。そして、ロゴデザインを制作するにあたり、i3の「3」が何かを定義づけようという話が出てきます。そこにはパーパスの文脈が含まれているべきじゃないかと。そこで、策定チームでディスカッションを行い「ビジネス、デザイン、テクノロジー」の3つのアイデンティティに定義づけをしました。そこから、以前に出ていた言葉と合わせて「Business x Design x Technologyの力で世界の進化を支える」というパーパスができたのです。

天野:既存のロゴは、ちょっと細身でクラシカルな書体で、色は青系を使ってましたよね。ワークショップで出てきた言葉である「人」を意識しました。デジタルUI、UXをやっている会社らしい雰囲気を大切にしながら、人間味を残したんです。色に関しては、パーパスと同時に策定したValueの中にある「Stimulative」“刺激的なパートナーであれ”という言葉から赤を選びました。

人の温かみを感じる「ヒューマニスト・サンセリフ」をオリジナルで設計したロゴタイプ。

 

社内でパーパスを育ててきたからこそできる、Valueの再策定

佐々木:実は、現在Valueを新たに社内で作り直しているところなんです。きっかけとして、チームビルディングの一貫で、デザイン本部単位のビジョンとValueを決めたんですよ。デザイナーたちの行動規範というニュアンスですね。それを代表の芝が見ていて、会社のValueも自分たちで見直さないかという話が出たんです。

策定の方法としては、リーダー層や社歴の長い方20人ほどを集めて2回ワークショップを行いました。会社として3年後5年後のなりたい像を明確化し、そのために必要な組織構造は何なのかを考えました。1回目と2回目の間に、私と芝で話し合いも行いましたね。実は、ワークショップの設計と運営は木下に任せているんです。彼女は入社2年目ですが、個人としてよりも組織に対しての意識が高い。加えて、大学時代からワークショップの運営等をしてきた経験があるので指名しました。

木下:最初は緊張しすぎてガチガチでしたね(笑)。オンラインだと、皆さんの熱量が掴みづらいので、かしこまって司会進行をしていたら、皆さんが助けてくださって。全員で取り組んでいる雰囲気に救われましたね。具体的には、会社の未来を描くためには現在を知らないといけないので、現状の良いところと悪いところを書き出してもらいました。そこから未来について皆で考えていったんです。

浸透させることの難しさ、大切さ。

天野:i3DESIGNのすごいところは、一度決めたパーパスを噛み砕き、運用する中で必要であれば社内で調整できることなんですよね。普通は、そのリソースが取れない。弊社のサービスでは「トレーニング」と呼びまして、運用の部分も一緒にお手伝いしています。自主トレできる会社もあれば、トレーナーがいないとトレーニングできない会社もある。それは人員や規模によって変わってくるかと思います。小さな会社ですと社員数が少なく、リソースが取れないですよね。逆に、大企業においては、その大きさゆえに全社員にパーパスを浸透させることが難しいということもあるでしょう。そういったところを、我々はお手伝いすることができるんです。

佐々木:実際の肌感覚として、パーパスが浸透するのって、結構時間がかかるんじゃないかと思います。2年ぐらいは必要かと。私たちも徐々に理解するようになっている感じはあるんです。例えば、採用においては選考基準ができたかなと思っています。入社したけど合わないな、ここが合わせられないと難しいなど、カルチャーマッチの具合がはかれる。そういった定量化できないところが、言語で明確化されていると採用者が拠り所にできるんです。

木下:私が入社時にはもうパーパスが策定されていたのですが、就活の時にウェブサイトを見て印象的だったことは覚えています。私の就活の基準が、UXデザインを取り組んでいる会社かつ、ベンチャーが良かったんです。加えて、パーパスやバリューからのコーポレートサイトの一貫性は見ていました。例えば、デザイン大切だよねって言っている会社なのに、デザインがおかしいところは、ちょっと信用できないのかなと思いましたね。やはり、内側の部分を知るためにはまず、表層的な部分も一致していないと、知る機会さえ持ってもらえないということはあると思います。

天野:若手の方が育っていて、すばらしいですね。御社がパーパスやValueを会社のカルチャーとして定着させるために、取り組んでいることは何かあるのでしょうか。

佐々木:今回、自分たちで作ったValueに関しては、現場で口に出す人が多いような気がします。加えて、部内で毎週M V Pを発表をしているんです。特に賞金とかは出ないんですけど笑。選ぶ基準としては、Valueやミッションに基づいて決めています。今回、一緒に決めてくださったパーパス「Business x Design x Technologyの力で世界の進化を支える」。抽象的な言葉だからこそ、そこに文脈が生まれ、自分たちでValueの策定をした際に役に立ったと感じているんです。これからさらにもう一段、パーパスを浸透させていくためにさまざまなことに取り組んでいきたいと思っています。

天野:お役に立てて嬉しいです。これからも何かのタイミングで協業などできたらいいですね。今日はありがとうございました。

i3DESIGNの情報はこちら

P.K.G.Tokyoが取り組むパーパスブランディング、Identity Tokyoの詳細はこちら

カテゴリー

ピックアップ

1 2 3 4 5 24
MENU