P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

REPORT

暮らしの中のパッケージデザインを見つめる/ベトナム

2024.06.04

世界の売り場の「少し気になるデザイン」。
人々の生活に根付いている、スーパーやドラッグストアは
多くの商品やデザインに触れる場所ではないでしょうか。

何気なく、日々手に取るもの。
手元に置いて、眺めたくなるもの。
誰かにプレゼントしたくなるもの。
作り手は商品にどのような洋服を着せ、どのようなイメージで見せるのか。
世界各国、様々な表現に溢れています。

今回は「ベトナム」ハノイにあるロッテマートから、
気になる商品をピックアップし、ご紹介したいと思います。

 

Kokola majorico /チョコレート菓子/ 250g/59000vnd(約360円)
インドネシアのメーカーの商品。
特徴的なドリンクのような容器は手にとるとずっしりとしており、
ボリュームあるサイズ感です。
商品ラインナップはチョコレート、チョコバナナ、抹茶フレーバーなどがあり、
どれも非常に鮮やかなカラーのパッケージで店頭でも目を惹きます。

 

G7/インスタントコーヒー/15袋入/60000vnd(約390円)
ベトナムはコーヒーの生産世界第二位。
独特な赤と黒の配色は、ベトナムの人にとって「健康」や「先進的」を感じさせるカラーだそうです。
ヘリコプターから降りてくるビジネスマンの男女の写真の入ったパッケージを
お土産にもらったことがある方もいるのではないでしょうか。

 

MR.VIET/チョコレート/60g/95000vnd(約580円)
ベトナムの農家のおじさんの姿を想起させるユニークなパッケージ。
ベトナムの地元農家を世界と結びつけることを目標に製品を展開しており、
産地にもこだわっているブランドです。
チョコレートだけではなく、ドライフルーツや珈琲、お茶などもラインナップは様々です。こちらでも「赤」と「黒」のカラーが使用されています。

 

Hủ Tiếu Nam Vang /インスタント麺/60g/5900vnd(約36円)
カラフルでインパクトのあるインスタント麺のパッケージの中でも
ひときわ目を引く、白で落ち着いた色合いのパッケージは
ロッテマートのプライベートブランド「choice L」のインスタント麺です。
全体を手書きでまとめており、どこか優しい印象を感じさせます。
日本ではあまり食品に使われない配色や表現もユニークです。

環境や風土が違えば、作り出されるデザインも大きく異なりますが、
その表現は非常にユニークで魅力的に感じました。

他国のパッケージを通して、日本の商品開発やデザインについての見え方も変わってくると思いました。引き続き、様々な国のパッケージを調査していきます。

参考資料 : アジア諸国でのカラー・イメージの共通性と差異/日本カラーデザイン研究所

P .K .G .Tokyo  大西あゆみ

REPORT

Meiji Dear Milk 「シンプル」へ価値を見出すアイスクリーム。

大手乳業メーカーである明治が独自技術を用いて開発した、原材料が乳原料のみというアイスクリーム。P.K.G.Tokyoがコンセプトからネーミング策定に伴走し、パッケージデザインの開発を行いました。

「原材料、乳製品のみ」とコミュニケーションしているこのアイスクリームは、発売以来アイスファンの間で話題に。私も開発に関わっていた頃から発売を楽しみにしていました。今回はDear Milkの一ファンとして、気に入っている食べ方をご紹介します。

 

 

1.ナッツをかける

カリカリとしたナッツの食感と、なめらかな口溶けのDear Milkのコントラストが美味しいアレンジ。ナッツに塩がまぶしてあるタイプだと塩ミルクアイスクリームになります。食べ応えがあるのでお腹を満たしたい時にぴったり。食べ応えという点ではグラノーラをかけるのもおすすめです。Dear Milkの上品な味わいを活かすために、甘さ控えめタイプのものを選ぶと良いと思います。

 

2.はちみつをかける

喉が痛い時や発熱している時、食欲はないけれどアイスクリームなら食べられるという人も多いのではないかと思います。私は風邪をひくと必ずといって良いほどアイスクリームで熱った喉を潤しています。初めてDear Milkを試食した時、これは風邪のお供に最適だ!と思いました。余計なものが入っていない事が体に嬉しいし、後味がさっぱりとしていて食べやすいからです。そのままでももちろん良いですが、さらに喉のために殺菌効果、抗炎症効果の高いはちみつをかけて食べるのがおすすめ。はちみつをじんわり喉に当てながらDear Milkの冷たさを味わうと、病気で辛い中にもひとときの幸せを感じられます。

 

3.コーヒーにかける

冷たいアイスと熱いコーヒー。この組み合わせが好きな人も多いのではないかと思います。別々に味わうのも良いですが、Dear Milkが溶けてきたらコーヒーにかけて飲むのも美味しいです。クセがないやさしい甘さなのでどんなコーヒーとも馴染むのではないかと思います。完全に溶けてしまった後にもできるアレンジです。

 

以上、いかがだったでしょうか。やさしい甘さとコクがありつつも後味がすっきりしていて、クセのない味わいのDear Milk。どんなものにも合う、まさにシンプルイズベストを体現しているアイスクリームです。フルーツと合わせてももちろん美味しいですし、スパイスをかけても意外な美味しさを味わえることを最近知りました。

 

アイスクリームには珍しく卵を使用していないこともポイントです。卵や乳化剤を使用していないのにこの味わいを作り出しているのは大変な企業努力があるわけですが、商品コンセプト及びパッケージデザインにおいては訴求内容を増やさず、常に「シンプル」を意識しました。さまざまな人が自分のお気に入りの食べ方を見つけられる懐の深さがあり、派手さはないけれどすっと日常に寄り添ってくれる、今まであるようでなかったアイスクリームです。2023年8月現在は関東エリアと、ふるさと納税で入手することができます。

 

P.K.G.Tokyo 中澤亜衣

 

Meiji Dear Milk

内容量 : 130ml
配達日・地域:2023年3月・関東エリア/ふるさと納税(北海道十勝芽室町)

REPORT

包むー日本の伝統パッケージ 目黒区美術館

2021.07.30

戦前からアートディレクターとして活躍する一方で、
自然の素材が生かされたパッケージに魅了され、収集を続けた岡秀行さんのコレクションを
集めた展示「包むー日本の伝統パッケージ」。目黒区美術館を訪れました。

館内は「木」「竹」「笹」「藁」「土」「紙」と素材別に分けられており、
それぞれの素材を生かしたパッケージが展示されています。

左 ささらあめ:宮城県/熊谷屋
中央 濱焼桜鯛:岡山県/株式会社 鯛惣
右 岡山獅子:岡山県/中尾正栄堂

ささらあめ
ひご竹の先に小さなさらしあめをつけ、それを竹筒に差し込んだシンプルな形状。
素材の特性を生かした放射状に広がるかたちは見た目にもとても面白く、可愛らしさもあります。
残念ながら現在は作られていないとのこと。竹ひごに飴を付けるのが難しそうですね…
濱焼桜鯛
竹皮で編んだ菅笠を二つ折りにした形。風通しがよく、運搬し、一時保持するために機能的な形状。

左 釣瓶酢:奈良県/釣瓶酢弥助
中央左 おひねり
中央右 真盛豆<利休井筒>京都府/金谷正廣
右 鬼づら 香川県

おひねり
おひねり、はまさに「チップ」のこと。一見お菓子が入っているのかと思いきや、お金でした。
例え、とっさのことでもむき出しを嫌う日本人的感覚の所産。
包むという面白さ、さっとした所作から生まれる紙の大胆な美しさに目を奪われました。

どのパッケージデザインも現代では私たちがなかなか目にすることの無いものが多い印象でした。
現代では量産にはなかなか向かない形状、またパッケージ費用を考えると製造は困難と感じるものも。
しかし素材の特性や形状を大胆に生かしたり、細密さに富んだデザインは非常に新鮮です。
特に竹や藁などを使ったパッケージでは、様々な編み方で異なる形状を作りだしたものが多く、
素材を無駄にせずいかに機能的に作り上げるかという作り手の考えを感じました。
よく一つの素材で、ここまで考えられるのかと驚かされます。

展示のなかで、岡さんの言葉が印象的でした。

ー豊かな暮らし、豊かな社会というそれまで一度も疑われようとしなかった大きな目標が
いったい本当に正しいのかどうか、密かな疑問が生まれつつある。
伝統パッケージを単なる古き良き自体の記念碑に終わらせてはならないであろう。
人間のこころそのものに光を当てた新しい価値観が来るべき時代の方向を決することは疑いを入れない。ー

目まぐるしく変化していく時代のなかでのパッケージデザインの在り方とは何なのか、
もう一度立ち返らなければならないのかもしれません。展示を通し、改めて考える機会となりました。
今回の写真以外にも、非常にたくさんのパッケージコレクションが展示されており、
とても楽しかったです。是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

-包む 日本の伝統パッケージ
7/13(火)-9/5(日)まで 目黒区美術館
午前10時-午後6時(入館は午後5時30分まで)

P.K.G.Tokyo
大西あゆみ

REPORT

中身もサイズも!ミニマルなバレンタインパッケージ

2021.02.12

バレンタインの季節になるとかわいらしいパッケージがお店に沢山並び見ていても楽しいですね。数年前からカカオ豆の仕入れからチョコレート製造まで一貫して行うBEAN to BARが海外を始め日本でも流行しています。BEAN to BARとは単一のカカオ豆と砂糖だけを原材料としたシンプルな作りで余分なものが入っていない為、カカオそのものの味わいや深み、香りが楽しめるのが特徴です。
今回はそんな中身もサイズもミニマルなチョコレートバーのパッケージを紹介します。


BAHEN & CO(オーストラリア)
ワインの醸造化家だったバーヘン氏が立ち上げたチョコレートメーカー。
コーヒー豆を使用した深みのあるチョコレート。
風合いのある紙へ豆の種類別に印刷されたグラフィカルな柄が可愛らしいパッケージ。
フレーバー豊かでついつい何種類も買いたくなってしまいますね。

●HOUSE BLEND 70%CACAO
●COLOMBIAN COFFEE 70%CACAO
●CHERRY & COCONUT 70%CACAO
https://www.bahenchocolate.com/ 


Le chocolat des Français(フランス)
チョコレートとアートが大好きな2人のデザイナーによって作られたチョコレートバー。
いかにも!チョコレートを愛しアートを重んじるパリジャンらしいデザイン。
蛍光の特色が映えていて、男女がダンスしているイラストがキュート。店頭では出会えなかった、目がハートになったモナリザ、自撮りをしているマリーアントワネットのイラストなど、遊び心満点なパッケージも。限定パッケージの男性と女性の横顔パッケージは合わせるとキスしているようなペアパッケージに。こちらも是非チェック。

●Extra dark chocolate with hazelnuts
●Milk chocolate with hazelnuts
https://www.lechocolatdesfrancais.fr/fr/


左:THEO PHILO(フィリピン)
こちらはフィリピン発のBean to barチョコレート。こちらは今までのような紙巻きではなく、ひとつひとつが箱に入って箔がふんだんに使われたリッチな仕様。フレーバーによってモチーフになる動物や植物が変わります。
今回選んだバーはバラココーヒー豆が使用されたミルクチョコレート。バラココーヒーとはフィリピンを代表するイベリカ種のようで深いコクが特徴。「バラコ」とはタガログ語で「強い男」を意味するほどしっかりと焙煎され、ブラックで飲まれることが多い品種だそうです。

● MILK CHOCOLATE BARAKO COFFEE
http://theoandphilo.jp/

右:PUMP STREET CHOCOLATE(イギリス)
イギリスの小さなベーカリーが立ち上げたチョコレートバーブランド。
パンを焼くオーブンで焙煎された豆から作られたこちらのバーは、カリカリシャリシャリとパン粉の食感が楽しめると話題になりました。こちらのパッケージはアルミ袋でカラーフレーバーがとっても上品。手触りはマットで仕上げられており、パン屋さんを思わせるような温かみもあります。

●CACAO85% ECUADOR
●CACAO66% SOURDOUGH & SEA SALT
https://pumpstreetchocolate.com/ 

どれも海外から輸入された商品でそれぞれユニークなグラフィックや仕様。
手のひらサイズでフレーバー豊なので、ついつい何種類も購入したくなってしまうようなパッケージばかり!見ているだけでも楽しいですね。クラフトチョコレートは一般的な百貨店等に並ぶようなギフトチョコレートとは異なり甘すぎないカジュアルなパッケージでまた別の魅力がある世界です。
今年のバレンタイン、身近な方へちょっとしたプレゼントにいかがでしょうか。

P.K.G.Tokyo 横田栞

REPORT

“スイスのデザインから紐解くこれからのデザイン”

2020.11.20

”スイスのデザインから紐解くこれからのデザイン領域と思考に触れる展覧会”
「FormSWISS展」は、グローバルデザインプラットフォーム「Form」(スイス、イギリスを中心に欧州で長年活動していたデザインディレクター丸山新さんが主宰する)が在日スイス大使館の協力のもと開催する”デザイン大国”スイスの現在進行形のビジュアルコミュニケーションデザイン(グラフィックデザイン、タイポグラフィ、モーショングラフィックスなど)と、そのデザイン的思考やライフスタイルにフォーカスするデザイン展。小さな村や街から国境を超えて世界のデザイン界に影響を与えているデザイナーを中心に、デザイン大学、美術館などへのインタビュー映像の上映や、現在のスイスデザインを代表するトップデザイナー達の作品展示など。スイスの多様なデザインや教育、ライフスタイルや価値観などをデザイン的視点から多角的に紹介されていました。

私が足を運んだのはギャラリースペースを併設する学芸大学の古書店「BOOK AND SONS」。向かったのは平日の昼下がり、女性が1人、2人ほど居ました。「BOOK AND SONS」ではスタジオ・ギャヴィエ&シや、ECAL(ローザンヌ州立美術大学)など6組の作品が展示されていました。 会場はその他2つ(表参道・原宿)に分かれていて、いずれも気鋭の建築家・中村竜治さんがが会場構成を手がけられたそうです。 会場を訪れると、コンクリートブロックと展示物が床に置かれていて、人はそのブロックの上を歩いて回るようになっており、俯瞰して展示物を見るように設計された空間はまるで私たちデザイナーがよくデザイン案をテーブルに並べ、俯瞰し眺める時と同じような感覚で楽しむことのできる設計でした。

スタジオ・Balmer Hahlen(バルマー・ヘレン)
●FCMA 20 ans, Visual identity 2017 スイス音楽基金の創立記念式典のデザインの一部。五線譜とドットで表現された音符が絡みあっている楽譜を表現し、動きとリズムが表現されています。

●Rendez-vous des createurs, Visual identity 2017 印刷でのグラフィックアートやデザインを行っているプロフェッショナルから9人を選びローザンヌで毎年行われる印刷展の為のアイデンティティーの一部。 動いて見えるような紙の形状やきらびやかなインキ加工など、凝られた印刷物を見るとまだまだ紙にも興味を持ってもらえそうだと感じました。


●Achrome-Piero Manzoni, Poster 2016 Piero Manzoni「単色画」展のポスター。こちらも印刷加工に凝っていて、シルバー紙にグラデーションのかかった白のグラフィックでキラキラとした見え方が素敵です。

また、フォントにも注目。
スタジオ・Futur Neue(フートゥル・ノイエ)さん
●Theatre Saint Gervais Geneve, Visual identity. 2018-present(上) ジュネーブのサンジェルヴェ劇場のアイデンティティ。こちらの使用書体は全て オリジナルなんだとか。
ECAL/University of Art and Design Lausanne (ローザンヌ州立美術学校)
●Fingers Crossed, Newspaper, 2020(下) 学生が実際に香港で香港デザイン研究所との共同リサーチを行い、編集、デザインを学生が行ったもの。 「幸運を」を意味する中国語のタイトルもオリジナルで作られたフォントです。 ローザンヌ州立美術学校では、世界各国の一流企業とコラボレーションし、様々な国で在学生の作品展やプロモーション活動を行い、各業界でも世界的に話題になっているそうです。

これらは展覧会のほんの一部で、原宿や表参道の会場では文房具最大手のコクヨのコラボ商品で、スイスのJonas Voegeli(ヨナス・フーゲリ)さんがリデザインしたキャンパスノートや、出店デザイナー達による「Form=かたち」をそれぞれに表現したオリジナルデザインのTシャツやトートバックなどがあったそう。
たとえば冒頭の音楽基金の創立記念式典のデザインですが、日本的デザインなら人や楽器の写真が入ったり、もっと多くの文字が入ったりと説明的なヴィジュアルになりがちですが、スタジオ・Balmer Hahlenの作品はとても抽象的。説明的すぎず、シンプル。そこに想像力をくすぐられておもしろいヴィジュアルだなと感じます。この様な展覧会が開催されて私も含め多くの方が影響を受けたと感じます。今後もデザイン大国スイスに限らず、他の国のその国ならではの展覧会が開催されるのが楽しみです。

P.K.G.Tokyo 横田栞

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