食卓を彩るパッケージデザイン

今回は私がJPDA企画創作展『水・塩・米・酒』に出品した、スパイスのパッケージデザインをご紹介したいと思います。
食卓を彩り思わず使いたくなってしまうペッパーミル『TOY MILL』。
毎日の食事がいつもより楽しくなったら、心豊かに過ごせると思い制作しました。
ペッパーミルは、調理道具の中でもシンプルで古くからある道具のひとつです。
スパイスを自分で挽いて、料理にふりかけるためのキッチンアイテムで、上部を回すと中のしくみが動いてスパイスがつぶれ、下からパラパラと出てきます。
その場で挽くので香りがとてもよく、いつもの料理がちょっと特別な味になるのが魅力です。
最近ではデザイン性の高いものや、職人が手掛けた木製ミル、片手で使える電動タイプなど、多彩なバリエーションがお店に並んでいます。
一般的にチェスの駒のような見た目をしており、レストランなどで見たことがある人は多いと思います。
種類が増えている理由には、ライフスタイルの多様化など
さらには料理を楽しむ時間そのものへの価値の向上があると思います。
また、現代においてはSNSの影響も無視できません。
食卓やキッチンの見た目を重視する文化が広がり、調理器具のデザイン性も重要視されるようになりました。
ペッパーミルは単にスパイスを挽くための機能を持つ道具としてだけでなく、「選ぶ楽しさ」や「使う楽しさ」を提供し、使う人の感性や生活スタイルに響くブランド価値をもつ存在に変化してきたように思います。
料理に必要だからという目的で選ばれていたペッパーミルも、今では「どんなデザインがキッチンに合うか」「そのブランドのストーリーが好きか」といった情緒的理由で選ばれるようになってきているように思います。
つまり、道具としての機能に加え、使う人のライフスタイルや価値観と結びつく「ブランド価値」が重要視されています。
『TOY MILL』はペッパーミルの上部と下部に分かれた特徴的な構造を活かし積み木を組み合わせたような遊び心のある形状にしました。
子供の頃のように好奇心を思い出しながら、毎日の食事の時間を楽しんでもらいたいというそんな願いから、積み木というモチーフにしました。
上部の形と木の種類・色味の違いで5種類のスパイスを表現しています。
下部の形は、積み木のような直角のかたちに、クラシックなペッパーミルを連想させる曲線を組み合わせ、食卓にやさしく溶け込む形を目指しました。
木製素材ならではの木目の美しさと、木の温もりが感じられる柔らかい手触りも魅力のひとつです。
商品名である『TOY MILL』の文字はスパイスの粒を表現しており、よく見ると文字と文字の間に小さなスパイスが隠れています。
どの角度からでも商品名が視認できるよう、ミルの角をまたぐようにレイアウトし、木の素材感を損なわないようレーザー加工で刻印をいたしました。
実際に食卓に並べてみると、気分がぱっと明るくなったように感じました。
いつもの食事も少し特別に思えて、食欲がわいてきたり、苦手な食べ物にも自然と手が伸びたり。
そんな、小さな変化や前向きな気持ちを引き出してくれる存在だと思います。
「道具」でありながら「遊び心」と「物語」を持つデザインに仕上げた『TOY MILL』は、使う人の日常に小さな発見と彩りをもたらしてくれると思います。
P.K.G.Tokyo 小寺敬一朗