P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

COLUMN

「割り切れなさ」を手がかりに

2026.04.02

ブランド開発の現場では、早い段階で方向性を求められます。何を目指すのか。誰に向けたものなのか。どんな立場をとるのか。そうした問いに向き合うたびに、そんなにきれいに割り切れる話ではないのに、と思うことがあります。

もちろん、方向性を示すこと自体は必要です。けれど、その過程で置き去りにされてしまうものについても、もう少し考えてみたいと思います。

 

言葉にならないものにも、手がかりがある

ブランドの方向性を考える場面では、経営層、営業担当、ブランドチーム、デザインチームなど、さまざまな立場の関係者が関わります。それぞれが見ている景色や優先したいことは、必ずしも同じではありません。だから、すぐにはひとつの言葉にまとまらない迷いや葛藤が生まれます。

そこには、守りたいものと変えたいもの、いまの顧客を見る視点とこれからの顧客を見る視点のように、簡単にはどちらか一方に割り切れない論点も並びます。そうした整理しきれていない状態は、一見すると厄介に感じられるかもしれません。けれど実際には、その企業や担当者が何を大切にしてきたのか、これから何を残したいのかが見えてくることもあります。

まだ言葉になっていない感覚のなかに、ブランドらしさにつながる手がかりが含まれていることがある。だからこそ、そうした思いや事情を言葉にしていくなかで、まだ言葉にしきれない違和感までな かったことにしてしまうと、大事な手がかりまで取りこぼしかねません。

 

うまく説明できないことが、重要でないとは限らない

実際の現場でも、クライアント側のご担当者が「なんとなく、これは違う気がするんです」と口にされることがあります。その一言は、議論を前に進めるには曖昧に聞こえるかもしれません。けれど、 あとから振り返ると、その違和感があった先に、コンセプトの核があったと気づくことは少なくありません。うまく説明できないことが、重要でないとは限りません。むしろ、すぐには説明しきれない ものほど、丁寧に扱う必要があるのだと思います。

 

迷いや違和感を置き去りにしないために

異業種からこの仕事に関わるようになり、多種多様なブランド開発の現場を見てきたなかで、強く感じることがあります。事業会社のなかには、本気でブランドをつくろうとしている人たちが確かにいるということです。大企業であっても中小企業であっても、「こんなものだろう」で済ませず、もっとよくしたいと考えている人がいます。見せ方を整えることにとどまらず、どんなブランドをつくりたいのかに向き合っている人がいます。

そうした姿勢に触れるたび、迷いや違和感をなかったことにせず、何を大切にしたいのかを見極めていくことが、ブランド開発では欠かせないと感じます。だからこそ、対話で耳を傾けたいのは、すでに説明できることだけではありません。どこで言葉に詰まるのか。どこで迷うのか。そうした割り切れない場所に、簡単には手放したくないものが表れます。

いくつかの可能性を見比べながら、それぞれの選択が何を残し、何を更新し、何を手放すことになるのかを丁寧に整理する。そのうえで、そのブランドが何を大切にし、どこへ進むのかを、企業や担当者とともに見極めていく。そこに、私たちの役割があるのだと思います。

 

P.K.G.Tokyo プロデューサー 深津 貴史

 


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