論理と感性をつなぐ「言語化」とは

論理と感性をつなぐ「言語化」とは
デザインを「論理的に語る」場面が、ここ数年で確実に増えたと感じています。「なんとなく良いから」では通じないなと感じているデザイナーは少なくないのではないでしょうか。良い悪いではなく、時代がそうなってきたのだと思います。
競合分析をして、ペルソナを置いて、ムードボードをつくって方向性を示す。 言葉と根拠を補強しながら、全体の整合性をつくっていく。 デザイナーにも「説得力」が求められるようになりました。ただここで少しだけ立ちどまって考えたいことがあります。
|目次
・「なんとなく良い」を大切にして良い
・論理は技術である
・感性は個人的で奥が深い
・だから「言語化」は、難しいだけのものではない
・もう一つ大事なのは「相手への関心」
「なんとなく良い」を大切にして良い
説得力と一見相反するようですが、私は「なんとなく良い」を大切にしてつくっていいと思っています。 むしろその感覚がないとクリエイティブは痩せていくように思います。
問題は「なんとなく良い」で終わってしまうこと。つくったその後に、他者の共感を得るストーリーへと昇華させるための論理的な思考が必要とされているのではないかと思うのです。
こんな良いものができた。
こんな良いストーリーができた。
そのワクワク感が相手に伝わって、はじめて人の心を躍動させるのではないでしょうか。「なんとなく良い」ではエネルギーが足りないことが多いです。
具体的にはこのような視点を自分に投げかけていたいと思っています。
・自分は面白がれているか
・人に語りたくなるか
・その提案を、心から「相手に届けたい」と思えているか
うまくまとめるほど、整うほど、熱が薄くなることもある。
だからこそ、論理だけに目を向けるのではなく感性を大切にする必要があると思うのです。
論理は技術である
デザインの仕事に求められる論理は、ある意味技術だと私は感じています。話の組み立てを決め必要なパーツを集める作業です。
たとえば、提案の場なら
・前提
・解釈
・提案
この順に並べるだけで、かなり伝わりやすくなります。
質問に答えるときは
・結論
・補足
この順で話すと、端的になります。
型があると頭が整理されますし、論理は比較的再現性がつくりやすいものだと思います。
感性は個人的で奥が深い
一方で感性は、もっと個人的です。
・自分は何を美しいと感じるのか。
・どうすれば心地がよいのか。
・どんな世界を目指したいのか。
これを鍛えるには、自分に向き合うしかない。外に答えはありません。論理よりも多様なものであり、複雑で奥が深い領域だと思います。「外に説明するため」ではなく、「内の解像度を上げるため」の訓練が必要です。例えば具体的なワークとして瞑想やジャーナリングなどが挙げられます。私の仕事であるコーチングもそのサポートです。感性を鍛えるためには自分自身との対話を避けて通れません。論理だけで答えが出ない時や選択肢が一長一短で悩ましい時、この感性を頼りに決断することになります。
個人的には最近映画がきっかけで内省をしました。『てっぺんの向こうにあなたがいる』と『栄光のバックホーム』です。どちらも実在の人物の生き様を元にした映画です。偉業からの闘病という同じシチュエーションで、どちらも「あなたは何にいのちを燃やすのか」と問いかけてくる内容でした。本当は何がしたいのか、死ぬ時にどうなっていれば後悔がないのか、改めて自身と対話をしました。
だから「言語化」は、難しいだけのものではない
論理の技術と、感性の鍛錬。 この2つが揃えば、言語化は特別に難しいものではないと思っています。先天的に得意な人もいると思いますが後天的にも鍛えられます。
それでももし言語化が難しいと感じるとしたら「十分に立ちどまれていない」可能性が高いのではないかと私は思います。
物事に気づくための余白がなかったり、
考える時間を捻出できていなかったり、
「本当はどうしたいか」に触れる前に進んでしまっていたり。
デザインにおける言語化のスキルは頭の回転の速さというより、論理の組み立て技術の習得と対象や自分との対話量に伴うものである。 そのように感じています。
もう一つ大事なのは「相手への関心」
そしてもう一つ、私たちの仕事がクライアントワークである以上外せないものがあります。それは「相手の想いを理解したい」という想いです。相手が何を大事にしていて、何を不安に感じていて、何を叶えたいのか。 それを理解したいと思えるかどうかで、提案の質は変わるのではないでしょうか。
信頼して、心を開いて、相手の言葉を受け取る。
その姿勢なしに人を説得して心を動かすものをつくるのは難しいのではないかと思うのです。
普段このような想いを書く機会はあまりありませんが、自分自身忘れないようにしたくて今の想いを言葉にしてみました。論理と感性どちらかではなく、両方。 その間をつなぐために、私は「言語化」にこだわっていきたいと思っています。
P.K.G.Tokyo 中澤亜衣








