P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

COLUMN

売れるパッケージデザインの共通項

これまで私たちはあらゆるジャンルの、あらゆる価格帯のパッケージデザインを手がけてきました。その中には、クライアントにとって快挙とも言える売り上げを出した商品や、コンシューマーから高い評価を得たものがたくさんあります。もちろんパッケージデザインのみで最終的な商品の売り上げが決まるわけではありません。商品が売れ続けるかどうかは製品の質によって決まるものですし、企画、開発、デザイン、生産、流通が連動し、安定的に継続することでロイヤリティが生まれブランドは形成されていくものです。しかし、パッケージデザインを通じたコンシューマーとの初期コミュニケーションの段階で不具合があると、手に取ってもらえない分、当然数字は伸びて行かないことも事実だと言えるでしょう。デザインを頑張れば売れるというものではありませんが、結果的に売れたものにはデザイン的共通項があると感じています。今回はその共通項を取り上げ、売れるデザインとは何かを考えてみたいと思います。

①「明快であること」

売れるパッケージデザインはとてもわかりやすく明快です。つまり伝えるべき情報と表現がとてもシンプルなのです。パッケージデザインにおいて複雑なコミュニケーションは弊害でしかありません。「パッケージデザインは一瞬のコミュニケーションである」ということは、この業界ではすでに常識と言ってもいいでしょう。ライバル商品が多く並ぶ店舗では数秒も注目して見てもらえることはありません。オンライン上でもそれは同じこと。同じカテゴリーの商品がサムネイル化されズラリと並ぶショッピングサイトで、説明的なデザインはコミュニケーションとして鈍重です。いかにシンプルなコミュニケーションを図れるかが売れるためには重要なのです。これはデザイナー自身が誤解しがちなことですが、美しいパッケージデザインがコンシューマーから評価されるではなく、明快なパッケージデザインが美しいと評価されるということです。会話のテンポが早かったり遅かったりするように、コミュニケーションには速度があります。中には建築デザインのように、10年住んでみて伝わるコミュニケーションもありますが、とりわけパッケージデザインは短距離走と言えるのではないでしょうか。10年続いたパッケージデザインでも、売り場では現役で短距離走を繰り返しているという特殊なデザイン分野なのです。

②「メッセージがあること」

売れるパッケージデザインには一貫して主張やメッセージがあります。極論かもしれませんがパッケージデザインはある意味、一方的なコミュニケーションです。インタラクティブなものではなく、返事は売り上げの良し悪しで推し量ることしかできない。当然ながら情報の発信源はあくまでこちらで、自分は何者であるかというメッセージを出していかなければならないのです。特に新参者であれば、少なくとも積極的に商品の方から「ここが優れていますよ」とか「こんなに美味しいですよ」と自らの優位性やメリットをプレゼンテーションしなければ、おそらく気に留めてくれることもないでしょう。デザインの大きな役割のひとつはビジュアルコミュニケーションです。何かを伝えるためにデザインがあるとすれば、その「何か」のないデザインはただの包装紙でしかない。上手く情報をまとめることやデコレーションがデザインではありません。主張こそがデザインの本分なのです。しかし、ここには大きな落とし穴があります。長年デザインに携わる中で、たくさんの失敗例を見てきました。それは①「明快であること」を忘れ、膨大な情報量でプレゼンテーションしてしまうというものです。熱意や自信があると人は雄弁になってしまいがちですが、説明を早口で畳み掛けられるような過多な情報は受け手にとってはノイズでしかありません。先述した通り、パッケージデザインにおいて複雑なコミュニケーションは弊害でしかないのです。つまり明快であることとメッセージがあることの両立こそが肝要で、いかに一言で自身を説明できるかが売れるデザインか否かの分水嶺なのです。

③「納得できること」

三つ目はデザインで表現されていることが納得できるものであるかどうかです。その主張や表現が共感できるかどうかとも言えます。売れるデザインには一瞬で人々の共感を得る説得力があるのです。つまり記載内容や表現に虚偽や誇張がないことは当然として、それ以前に表現自体に整合性があるかどうかが、刹那のコミュニケーションに求められているということです。例えばとても辛い食品のパッケージをデザインするとしましょう。唐辛子をイメージするような赤いパッケージが主流です。その中で薄い水色のパッケージを作って目立ったとしても、果たしてそれは納得してもらえるでしょうか?そのカラーリングで定番と呼べるほどに定着していくためにはそれ相応の理由が必要です。よほど合点が行く表現でないとそれは異端として見られるだけでしょう。カラーマネージメントによる印象の話だけはありません。少し価格の高い上質な商品のパッケージは相応の顔つきでないと納得してもらえませんし、とても小さな商品がダンボールほど大きいパッケージだと人は違和感を覚えます。ターゲットの人たちが「こうあってほしい」という潜在的なニーズを汲み取ったデザインでなければならないのです。予想は裏切ってほしいけれど、期待は裏切って欲しくない。そう言った市場の空気を読むことができるパッケージデザインこそがヒット商品たり得るのです。

この大きく三つの要素が私が考える「売れるパッケージデザインの共通項」です。売れるパッケージデザインを作るということは、行き交う人々に何かの主張を訴え足を止めてもらい、その共感によって拍手をもらうことです。そのためには端的かつ明快に、そして納得できる主張をしなくてはなりません。売れているデザインは無理なくこれらをワンビジュアルで表現しているのです。しかし、これはあくまで売れることを目的としたデザインの共通項であって、必ずしも良いデザインの共通項ではありません。目立たなくても素晴らしいデザインはたくさんありますし、数字では表せない存在意義のあるデザインもたくさんあります。今回、挙げた内容は「消費」という巨大な大衆心理の大海原で生き残っているデザインの共通項です。こういった観点でパッケージデザインを分析してみることで、皆さんが新たなヒット商品を生み出す一助となれば幸いです。

P.K.G.Tokyo ディレクター:柚山哲平

COLUMN

パッケージ差別化への手掛かり

2020.07.10

自粛期間が明けつつも、不安な世の中が続いています。今回のコロナ禍でスーパー等に足を運ぶ機会が増えた方も多いのではないでしょうか。私もそんな内の一人です。スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアには数え切れないほどのパッケージが並んでいます。そんなたくさんのパッケージの中からどうやって商品は選ばれるのでしょうか?「美味しそうだから」「効きそうだから」「楽しそうだから」「可愛いから」「かっこいいから」「パッと目についたから」「CMで見たから」「SNSで見たから」人によって理由は様々だと思います。一つ一つの商品が、それに関わる何人もの人たちが頭を捻って、時間をかけて、たくさんのライバルの中から選んでもらえるように工夫して、やっと店頭に並んでいることがほとんどです。
今回は私がパッケージの視点からちょっと変わった工夫をしているなと思ったデザインを紹介します。

綾鷹
(C) COCA-COLA(JAPAN)COMPANY,LIMITED

おそらく日本人でこちらの商品を見たことがない人はいないのではないでしょうか?ペットボトルのお茶として大きな知名度をもつブランド、「綾鷹」のパッケージです。すっかり慣れ親しんだ顔つきですが、ちょっと他のパッケージにはないポイントがあります。「あやたか」の平仮名のルビが漢字の「綾鷹」に対してかなり大きいのです。書籍や広告の通常のルビではなかなかこんなサイズは見かけないのではないでしょうか?勝手ながらこのデザインに至った経緯を考察すると、ブランドを立ち上げる際にまだ見慣れない「綾鷹」という商品名をより多くの人が認知しやすいようにルビを大きくする手法を取ったのでは、と考えています。

シリーズ商品についてはルビの大きさは普通になっています。もちろんペットボトルのラベルという限られたスペース内で情報をまとめる意味もあると思いますが、シリーズ商品の展開に至るまでにブランドの認知が上がったため、ブランドロゴとして扱う場面では「綾鷹」の漢字が目に入れば目的が達成されていると判断されたのではないでしょうか。「綾鷹」の漢字がギュッと密度があるのに対して平仮名の「あやたか」にはゆったりとしたスペースがあり、ルビを大きく扱うことではんなりとした上品さが演出されより美味しそうなデザインに感じられます。

ブレンディ®カフェラトリー®
(c) Ajinomoto AGF, Inc.

かつてカフェラトリーが発売される以前は、スティックコーヒーの棚は他の棚よりも飲用シーンをモチーフにしたような情緒的なパッケージが多かった印象がありました。コーヒーはシズル単体では見せ方での差が付けにくいのが理由ではないかと考えています。このカフェラトリーのパッケージは極限まで要素を削り、あえて他の商品の逆を目指すことで結果として棚の中で目立つデザインになっています。

またシンプルな構成のために箱に使われている弾きニスの質感がとても映えていて、少しテクスチャのある紙を使ったかのような上質な雰囲気が感じられます。シズル部分はグロスでツヤツヤな表現になっておりニスだからこそできる表現が存分に使われています。少ない要素の中で全く無駄な作りがない、私が好きなパッケージの一つです。

味覇
(C)KOUKI-SHOKO CO., LTD.

こちらもどこのスーパーでも見かける商品です。よくみると「味覇」の覇の字の冠部分、辺が一本足りていません。こちらの商品は細かな要素をなるべく削り、ロゴタイプがデザインのほとんどを占めています。より太く力強く見せるため極限まで文字を太らせ、視認性を損なわない範囲で辺を省略したのだと思います。パッケージを構成する要素は少なめですがミニマルなイメージはなく、大胆なデザインになっています。日本のデザインではありますが、本場中国の昔からあるようなテイストを表現しているように思います。

SORACHI1984
©SAPPORO BREWERIES LTD.

最後に紹介するのは弊社で制作させていただいた、SORACHI1984です。こちらもちょっとした工夫をパッケージに施しています。

よく見るとホップの中にソラチエースの「A」が隠されています。あえて近い色味のゴールドで表現しているため一発で店頭で気づく方は少ないのではないでしょうか。また、「A」という文字自体もなぜAなのかは一見わかりにくいかと思います。こちらはSORACHI ACEの綴りが由来となっています。元々SORACHI1984はその個性ある味わいのため、好き嫌いがはっきりするような商品です。その代わり、ハマる人にはとことんハマる、そんな少しニッチな立ち位置目指しています。故に成り立ちやストーリーに興味を持ってくださるファンの方も少なくなく、そんな方がソラチエースの綴りと、ホップの「A」の発見がリンクしたときにちょっとした喜びを感じられるギミックになっています。

今回は四種類のパッケージを紹介させていただきました。それぞれが色々な方面からのアプローチで商品をよりよくみせ、手にとってもらえるような工夫をしています。全てが大々的な要素ではありませんが、隅々までこだわりを持って一見気づかないような部分にまでを趣向を凝らしています。
普段何気なく手にとっている商品について、なぜ数ある商品の中から選んだのかを改めて意識してみると新しい発見があるかもしれません。

P.K.G.Toky 白井 絢奈

NEWS

<7月31日まで> オンライン・デザイン相談、期間を延長します!

先日ご紹介しました無償のオンライン・デザイン相談の期間を7月31日まで延長します!
また会議形態もZOOMに限らず、ご希望に沿った形でお伺いします。

商品企画、ネーミング、プロダクト、パッケージ、ブランディング、コーポレートアイデンティティ、店舗設計、市場戦略、デザイン経営など、どのような話題でもOKです。
日頃デザインやものづくりで悩まれていることをぜひ私たちにお聞かせください。

【オンライン・デザイン相談/お申込み方法】
https://www.pkg.tokyo/
上記ウェブサイトContactフォームから「オンライン・デザイン相談希望」へ
「希望日時を3候補」記載(月〜金 10:00-18:00のうち40分程度)の上お申込みください。
先着順で日時優先確定させていただきます。

【オンライン・デザイン相談/内容】
・事前にヒアリングシートへご回答いただきます。
・時間/40分程度(15分ヒアリング+20分アドバイス+予備5分)
・方法/ZOOM、GoogleMeet、Skypeなどご希望に応じて
・人数/複数参加可能。

どうぞこの機会を活用し、お気軽にご相談ください!ご連絡お待ちしております。

P.K.G.Tokyo:天野和俊

NEWS

今こそ、オンライン・デザイン相談を。今だから、無償で。

今まさに、日本のあらゆる地域で、変わらずものづくりをしたい、もっと人々に届けたい、と強い思いで事業を続けている企業が星の数ほどあると想像します。特に私たちは、日本の企業の99.7%を占める中小企業こそ、そのような志を持って企業活動をしているに違いないと思っています。

日本がこの新型コロナ禍を乗り越え、より親密な運命共同体となった時、これまでとは少し違った新しい世界が待っていることを想像してみましょう。その新しい世界では、現存する商品やサービスがこれまでと同じ価値を維持することができるのだろうか。あるいは、今まで鳴かず飛ばずの商品やサービスにも新しい価値を見出される世界が待ってやしないだろうかと。

今、企業家や企業における商品やサービス開発の中心を担う方々が抱える見えない不安を、新しい世界における希望へと変換するために、私たちP.K.G.Tokyoはオンライン・デザイン相談窓口を設けます。商品企画、ネーミング、プロダクト、パッケージ、ブランディング、コーポレートアイデンティティ、店舗設計、市場戦略、デザイン経営など、どのような話題でもOKです。

P.K.G.Tokyoディレクターが聞き役・指南役となり、40分のWeb会議をフル活用したオンライン・デザイン相談です。外出自粛の今だからこそ、5月6日までの受付分は無償で、少しでも多くの方に貢献できればと考えます。

【オンライン・デザイン相談/お申込み方法】
https://www.pkg.tokyo/
上記ウェブサイトContactフォームから「オンライン・デザイン相談希望」と「4〜5月の希望日時を3候補」記載(月〜金 10:00-18:00のうち40分)の上お申込みください。先着順で日時優先確定させてただきます。

【オンライン・デザイン相談/内容】
・事前にヒアリングシートへご回答いただきます。
・時間/40分(15分ヒアリング+20分アドバイス+予備5分)
・ウェブ会議はZOOM(パスワードつき)を使用の予定。
・複数人参加可能。

これまでデザインなど利用してこなかったが、これからでもデザインを活用できるだろうか?というお話も喜んでお伺いします。ご応募はお気軽に!

P.K.G.Tokyo:天野和俊

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