P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

COLUMN

パッケージ差別化への手掛かり

自粛期間が明けつつも、不安な世の中が続いています。今回のコロナ禍でスーパー等に足を運ぶ機会が増えた方も多いのではないでしょうか。私もそんな内の一人です。スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアには数え切れないほどのパッケージが並んでいます。そんなたくさんのパッケージの中からどうやって商品は選ばれるのでしょうか?「美味しそうだから」「効きそうだから」「楽しそうだから」「可愛いから」「かっこいいから」「パッと目についたから」「CMで見たから」「SNSで見たから」人によって理由は様々だと思います。一つ一つの商品が、それに関わる何人もの人たちが頭を捻って、時間をかけて、たくさんのライバルの中から選んでもらえるように工夫して、やっと店頭に並んでいることがほとんどです。
今回は私がパッケージの視点からちょっと変わった工夫をしているなと思ったデザインを紹介します。

綾鷹
(C) COCA-COLA(JAPAN)COMPANY,LIMITED

おそらく日本人でこちらの商品を見たことがない人はいないのではないでしょうか?ペットボトルのお茶として大きな知名度をもつブランド、「綾鷹」のパッケージです。すっかり慣れ親しんだ顔つきですが、ちょっと他のパッケージにはないポイントがあります。「あやたか」の平仮名のルビが漢字の「綾鷹」に対してかなり大きいのです。書籍や広告の通常のルビではなかなかこんなサイズは見かけないのではないでしょうか?勝手ながらこのデザインに至った経緯を考察すると、ブランドを立ち上げる際にまだ見慣れない「綾鷹」という商品名をより多くの人が認知しやすいようにルビを大きくする手法を取ったのでは、と考えています。

シリーズ商品についてはルビの大きさは普通になっています。もちろんペットボトルのラベルという限られたスペース内で情報をまとめる意味もあると思いますが、シリーズ商品の展開に至るまでにブランドの認知が上がったため、ブランドロゴとして扱う場面では「綾鷹」の漢字が目に入れば目的が達成されていると判断されたのではないでしょうか。「綾鷹」の漢字がギュッと密度があるのに対して平仮名の「あやたか」にはゆったりとしたスペースがあり、ルビを大きく扱うことではんなりとした上品さが演出されより美味しそうなデザインに感じられます。

ブレンディ®カフェラトリー®
(c) Ajinomoto AGF, Inc.

かつてカフェラトリーが発売される以前は、スティックコーヒーの棚は他の棚よりも飲用シーンをモチーフにしたような情緒的なパッケージが多かった印象がありました。コーヒーはシズル単体では見せ方での差が付けにくいのが理由ではないかと考えています。このカフェラトリーのパッケージは極限まで要素を削り、あえて他の商品の逆を目指すことで結果として棚の中で目立つデザインになっています。

またシンプルな構成のために箱に使われている弾きニスの質感がとても映えていて、少しテクスチャのある紙を使ったかのような上質な雰囲気が感じられます。シズル部分はグロスでツヤツヤな表現になっておりニスだからこそできる表現が存分に使われています。少ない要素の中で全く無駄な作りがない、私が好きなパッケージの一つです。

味覇
(C)KOUKI-SHOKO CO., LTD.

こちらもどこのスーパーでも見かける商品です。よくみると「味覇」の覇の字の冠部分、辺が一本足りていません。こちらの商品は細かな要素をなるべく削り、ロゴタイプがデザインのほとんどを占めています。より太く力強く見せるため極限まで文字を太らせ、視認性を損なわない範囲で辺を省略したのだと思います。パッケージを構成する要素は少なめですがミニマルなイメージはなく、大胆なデザインになっています。日本のデザインではありますが、本場中国の昔からあるようなテイストを表現しているように思います。

SORACHI1984
©SAPPORO BREWERIES LTD.

最後に紹介するのは弊社で制作させていただいた、SORACHI1984です。こちらもちょっとした工夫をパッケージに施しています。

よく見るとホップの中にソラチエースの「A」が隠されています。あえて近い色味のゴールドで表現しているため一発で店頭で気づく方は少ないのではないでしょうか。また、「A」という文字自体もなぜAなのかは一見わかりにくいかと思います。こちらはSORACHI ACEの綴りが由来となっています。元々SORACHI1984はその個性ある味わいのため、好き嫌いがはっきりするような商品です。その代わり、ハマる人にはとことんハマる、そんな少しニッチな立ち位置目指しています。故に成り立ちやストーリーに興味を持ってくださるファンの方も少なくなく、そんな方がソラチエースの綴りと、ホップの「A」の発見がリンクしたときにちょっとした喜びを感じられるギミックになっています。

今回は四種類のパッケージを紹介させていただきました。それぞれが色々な方面からのアプローチで商品をよりよくみせ、手にとってもらえるような工夫をしています。全てが大々的な要素ではありませんが、隅々までこだわりを持って一見気づかないような部分にまでを趣向を凝らしています。
普段何気なく手にとっている商品について、なぜ数ある商品の中から選んだのかを改めて意識してみると新しい発見があるかもしれません。

P.K.G.Toky 白井 絢奈


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