P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

INTERVIEW

デザイナーと共に、ひとつ目のボタンをかけること。
プレミアムガーナ

2022.01.18

2021年10月に発売を開始したプレミアムガーナ。
チョコレートブランド「ガーナ」としては初めてのプレミアムラインだ。
このプレミアムガーナのアートディレクションを担当した柚山さんに話を伺った。

話:柚山 哲平(P.K.G.Tokyoディレクター)
取材・文:大島 有貴(ライター)
 

シリーズ全体が売れたプレミアムライン
「私たちはさまざまな商品のパッケージをデザインしてきていますが、その中で感じているのは、単品として売れることだけでなく同じシリーズ全体が売れることが重要だということです」と語る柚山さん。詳しく聞くと、シリーズに一貫性や連動性がなければ、ブランドへの信頼が生まれず、ブランドの価値を残すのは難しいということだ。「つまり、どんなブランドに育てていくかという戦略を立てる段階から、デザインというひとつのゴールを見据えていることが重要で、その議論にデザイナーも参加するべきだ」と言う。

デザイナーと共に、ひとつ目のボタンをかける意味
一般的なデザイン受注の形は、クライアント社内で企画が上がり、ある程度方向性が決まってきた段階で、デザイン発注をかける形が多いとのこと。「一つ目のボタンをかけ違ってしまうと、そのしわ寄せは最後のボタンにまで影響します。実際に、消費者の皆さんが目にするのは最後のボタンだけです。ですが、それまでの議論や経緯を目に見える形にすることが、デザインの役割。ブランドとしての一貫性を保つためにも、最初の議論にデザイナーが参加しないのはもったいないと考えています。そこに私たちが立ち会うことで、今まで培った経験値からのアドバイスや、先入観がない第三者の意見を議論の場に持ちよることができる。そのような観点から、企画が立ち上がる段階から関わりを持たせていただきたいというのが基本的なP.K.G.Tokyoの考え方です」。

名前もまだない段階でのご依頼
2020年10月、プレミアムガーナのプロジェクトはスタートする。クライアントである株式会社ロッテとは、柚山さんとは10年以上の長いお付き合いとのこと。「お話をいただいた時、プレミアム志向のガーナブランドを作る。だけど、”名前はまだない”という状況でした」つまり「プレミアムガーナ」という名前が決まる前の段階。そこから、クライアント企業とP.K.G.Tokyoのブランドづくりが始まっていった。

人々は何に「プレミアム」を感じるのか
大きな企業が新たなブランドを作るときには、マーケティングが欠かせない。そのため、ブランドの名前、デザインを決めるにあたり、一般からの意見を調査することが常だ。「ご相談をいただき、何種類かのブランド名やデザインをロッテさんに提案しました。その後、どうすればプレミアムを感じてもらえるか、あらゆる観点で調査が行われました」消費者に「ガーナらしさ」と同時に「プレミアムさ」を感じてもらうためには、どのような味、名前が良いのか。さらに、ロゴマークは明朝体、筆記体どちらが良いかなど様々な観点で、消費者が何に「プレミアム」を感じるのかという調査を行ったという。


企画から関わり、提案、調査を経てクライアント企業と一緒に作り上げたパッケージ。
どんなパッケージがいいのか。ではなく「どのようなブランドなのか」という定義づけをクライアントと共に行い、デザインを作り上げた。

高級感と大衆性のさじかげん
「今回の案件に関わらず、コンビニやスーパーに並ぶような商品ブランドを作るにあたっては、その場所の空気感、温度感を掴むことが大切だと思います」と言う柚山さん。高級感を出すと一言でいっても、商品は百貨店で販売する高級ショコラブランドではない。その売り場に集まるお客さんや空気に対して「ちょうどいい」高級感を探し、表現することがデザイナーの仕事であると言う。「例えば、普段J-POPを聴いている人たちがそこに買いに来るお客さんだとしたなら、そこでジャズを流したとしても、おそらく響かない。いかにポップミュージックを上品な形で作るか、というところがマスプロダクトと言われる商品デザインの醍醐味でもあるんですよね」。

話せばわかる。
だからこそ「巻き込んでほしい」

「私は基本的に「話せばわかる」というスタンスなので、社内の議論にどんどん巻き込んでくださいとよく言っています」詳しく聞くと、大きな企業ほど関わる人が多くなり、決裁の所在が不明であったり、マーケターとデザイナーで意見が食い違ったりすることもあるそうだ。「ロッテさんとは信頼関係があるからこそ、企画段階から関わることでいい形でプレミアムガーナというブランドができたと思います。社内の議論に第三者として参加することで、いいものを作れたという感覚があるのです」。

最後に柚山さんにP.K.G.Tokyoにおけるデザインの面白さについて聞いた。「世の中はどんどん移り変わっています。自分たちが、ここが平均値だと捉えていた層が、いつの間にかそうではなくなり、ニッチであったところが市場として魅力あるものに成長している。そういったことを企画段階から関わることで、クライアントに共有することができます。今回のロッテさんの案件では、どういったプレミアムが「ガーナらしさ」なのかを、根本から議論することができました。ネーミングに始まり、企画や戦略、デザイン、販売方法などのセクションを分けることなく、シームレスにデザインの立場から向き合う。それこそがP.K.G.Tokyoが作り出すデザインの面白さだと思うのです」。

 

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▶︎日本酒 FRESH VINTAGEのブランド・デザインができるまで
▶︎愛されるブランドの裏話。 — SORACHI 1984 ファンミーティング —


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