P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

COLUMN

「海外っぽさ」を求めて

ゴールデンウィーク、みなさんはどのようにお過ごしでしたか?
大型連休になると旅行に行きたくなるものですが、緊急事態宣言下ではそれも叶いません。
そこで、今回は身近にあるもので「なんとなく海外に行った気になろう」ということで、「海外っぽさ」を感じられるパッケージをご紹介いたします。
手っ取り早く「海外っぽい」を見つけるために向かったのはカルディコーヒーファーム。
スーパーでは見ないような輸入品や可愛らしいパッケージに出会えます。
記事のトップ画像は欲望のままに購入した商品たちです…。

まずはこちら。
韓国のお酒「マッコリ」の缶パッケージ。
原産国は大韓民国とありますが、裏面の表示が日本語なのでこちらは日本でデザインされていると推測します。
缶体がマットなホワイト。マッコリらしさを感じます。シュリンクフィルムを使用しているため、ここまで強いマット表現が可能なのでしょうか。
全体的なグラフィックがシンプルでこれも韓国っぽさがあります。お酒が飲めないけれど思わずパケ買いです。

お次はこちら。
フィリピン カラマンシードリンク。

カラマンシーは四季橘とも呼ばれる柑橘類の一種です。味はシークヮーサーに似ている気がします。酸味と甘味のバランスは甘味が強めです。
こちらのパッケージは文字表現が異国的で素敵ですが、個人的に面白いと感じたのはこちら。

ぺり…

下の部分、シールになっています。


元のデザインを崩さないように下のコピーを日本語に差し替えています。
大きなデザイン変更は缶自体を印刷し直すコストがかかりますが、シールを貼ることでこれを回避しつつ、元のデザインの良さを残しています。
ちなみにオリジナルの缶はカラマンシーの断面が見えています。

お次は ストレートアップルジュース。
こちらはアメリカ産。瓶の形がリンゴのようになっています。
シンプルな表現ながら美味しそうです。行ったことないけどアメリカの農村の懐かしさを感じます。

ココナッツミルクとレッドカレースープ。

両方とも紙パックタイプ。正面のデザインは似ていますが、ココナッツの方だけ裏面表示系が日本ですが、カレーはシールで貼ってあるため現地のデザインでしょうか。
赤唐辛子がガッツリのっていて辛くて美味しそうです。構成的には日本の食品パッケージとそう大きな違いはないかなと思いますが、模様の表現や書体、写真の色味に海外の雰囲気を感じます。

以前、展覧会で海外商品を日本のマーケット向けにリデザインしている会社の方からお話を伺いました。1つの商品でもそれぞれの国の親しみやすい表現に合わせ、受け入れやすくしているそうです。
普段の生活に馴染みのないものを取り入れるのはハードルが高いものですが、その国のポピュラーな表現に寄せることでこの障害を取り除きます。
カルディでも輸入品をそのままのデザインで販売しているもの、異国らしさを残しつつ日本向けにデザインしなおしているものなどが見受けられました。

普段の生活の中では安心を求めて慣れ親しんだものに手を伸ばしがちですが、たまには見慣れない商品を「これは何だろう?」と好奇心から買ってみるのも思いがけない出会いがあり楽しいです。
パッケージから感じる海外体験、おすすめです。

 

 

 

おまけパート

さて…、これらを実食…。
今回はもう一つ、フォーの即席麺も買ってきていました。
※即席麺のフォーには蒸し鶏はついていません。お好きな食材をプラスアルファがおすすめです。
今日のお昼はこのフォーにもう一品加え、「なんとなくエスニックランチ」を。近所のスーパーできゅうりが大変お買い得でした。これからの時期におすすめしたいきゅうりを使ったレシピです。

中華風 きゅうりと海老のオイスターソース炒め
※これは私の母が作ってくれたざっくりしたメニューを元に書き起こしたレシピです。
調味料の量はお好みでご調整くださいませ。

材料
・きゅうり・・・・・・2本
・生姜・・・・・・・・適量
・海老・・・・・・・・160グラム
冷凍のむき海老を流水解凍して使用しましたが、生の場合は背わたをとります。
・ごま油・・・・・・・適量
・砂糖・・・・・・・・小さじ1
・オイスターソース・・小さじ1
・めんつゆ・・・・・・小さじ2
・水溶き片栗粉・・・・適量

作り方
1) ピーラーできゅうりの表面を縦3本くらい剥きます。
2) 長さ5センチほどに切り、さらに短冊状に切ります。
3) きゅうりに塩を振ってしばらく置きます。その後キッチンペーパーなどで水切りをします。
4) 生姜を千切りにします。
5) フライパンに油をしき、中火で海老を炒めます。塩胡椒で下味をつけます。
6) 水切りしたきゅうりを加えてさらに炒めます。
7) 砂糖、めんつゆ、オイスターソースで味付けし、生姜を加えてざっと混ぜます。
8) 水溶き片栗粉を加え全体的にとろみをつけ、最後にごま油を少したらして風味付けして完成。

ベトナムのフォー、オリジナル和製中華、フィリピンのカラマンシージュース…。
最終的にどこの国のものなのかわからないランチプレートになりましたが、これはこれでOKということで…。

P.K.G.Tokyo
佐藤 光

NEWS

伊勢抹茶 / 伊勢茶 サンプリングパッケージ

昨年アゼルバイジャンにて製造販売開始された伊勢茶。
順調な滑り出しだったにも関わらずその後新型コロナウイルスが猛威を振るい、
海外向けのお茶需要が激減してしまいました。

そこで国内においても伊勢茶の魅力を伝えるべくHISの関連ホテルや店舗でサンプリングをすることとなり、P.K.G.Tokyoは昨年に引き続きパッケージデザインを担当しました。

ブランドロゴ、基本的なトーン&マナーは海外販売のデザインと統一しつつ、
外袋はオリジナルの紙袋を作成しホテル土産らしさのエッセンスを加えました。
外袋を開けると中に4種のお茶が入っている、限定30,000セットのアソートです。

見かけたらぜひ飲み比べを楽しんでみてくださいね。

P.K.G.Tokyo ディレクター:中澤亜衣

COLUMN

時代と共に変化していく「サービス」のおもしろさ

2020.12.17

時代と共に様々なサービスやシステムが大きく変わろうとしています。
今回はわたしが日々の生活の中で面白いと感じた、これまでとは違う新しい「サービス」を紹介します。

オンライン寄せ書き「yosetti」
https://www.yosetti.com

こちらはオンラインで寄せ書きを作成するwebサービス。
web上で集めたメッセージデータをpdf化、実際に寄せ書きとして形にして相手に発送できるもので、友人の結婚祝いにあたりこのサービスを知りました。色紙を購入→メッセージを書き次の人へ回す→全体を装飾する、、様々なプロセスを経て行う「寄せ書き」ですが、オンライン上で簡単に作成が可能になりました。背景のデザインや文字の色は自由に選択し、写真の添付も可能。当初はオンラインの寄せ書きというイメージが、どこか希薄なのでは?疑心暗鬼でしたが、実際に使用する、手軽に使えること、書き直しが出来ること、出来上がったものを見られるなど、メリットも多く面白いサービスだと感じます。また物理的な距離があっても簡単に寄せ書きが出来るのは、大きなメリット。なるべく人との接触を避けなければいけない、今の時期にも使いやすいですね。

お花のサブスクリプション 「ハナノヒ」
https://www.hibiyakadan.com/shop/hananohi

最近よく耳にする「サブスクリプション」。月定額制アプリを使い、店頭で好きなお花を選び、スマートフォンでタッチで決済し購入できる仕組みです。これまで「花」を買うことがどこかハードルがある、また中には気恥ずかしいという人も多かったようですが、手軽さが人気で店頭で男女問わず、仕事帰りの方がスマートフォンを片手にさっと買っていく姿が多く見られ、印象的でした。数本から気軽に購入できることや、決められたお花が届くのではなく、自分で無理のない範囲で「選べる」のも人気の理由かもしれません。

これまで直接人対人のコミュニケーションを通さなければ出来なかったような仕組みが変化しています。そしてオンラインやデジタルの要素を取り入れたサービスに触れると、パッケージデザインにも新たな「仕組み、サービス」が出来るのではないかと感じました。オンラインで商品を見ながらの買い物はあたり前になってきましたが、ネット上の仮想空間で実際に商品を手に取るように買い物をし、商品を選ぶ時代もそう近くないのかもしれません。ラベルレスパッケージが登場した今、紙ではない新たな未来のパッケージなど色々な可能性も考えられます。

パッケージデザインの持つ素材の手触りや温もり、それが手に取る人に与える影響。それはとても大きな意味があるように思います。その一方、オンラインやデジタルにおける新たな視点を持つことも必要になっていくのだと感じました。私たちに大きな影響を与えたこの変化とともに、様々なサービスやものの在り方を考えていく転換期が訪れています。

P.K.G.Tokyo 大西 あゆみ

COLUMN

デザインの対価/イニシャルゼロ

人はその人にとって価値のあるものに対し、それを得るための対価として金銭を支払います。価値とはとても不確実なもので、その人にとっては価値のあるものでも、違う人にとっては無価値なものということもよくある話です。デザインという分野はとても誤解を受けやすい分野だと感じます。どんな誤解かと言うと、それは煌びやかさや華やかさこそデザインの本質であるという誤解です。デザインの果たす役割は装飾だけではありません。デザインが介在することによって達成できる目的は多岐にわたります。テレビドラマやCMなどで出てくるデザイナーは安直にオシャレで華やかな職業として描かれていますが、現場はもっとクレバーでストイックです。このことからも社会が抱く「デザイン」へのイメージが「何だかオシャレな職業」程度であることを見ると、社会がデザインに期待する価値と実際のデザインが社会に対してもたらすことができる価値とは、大きく乖離しているのではないかと感じるのです。

社会のデザインに対する「誤解らしきもの」が払拭できない現在。日常的にデザイン業務に関わりのない方々から見れば、デザイン費用はとても想像しづらいものかもしれません。デザインをお願いしたいけれど費用がいくらかかるかわからないという声はよく耳にする意見です。価格の相場が決まらない理由は、依頼できる内容の幅が広いことやデザインを提供する側のスキルが上と下で大きく異なるということもありますが、最も大きな理由はデザインに対する評価が人によって大きく差があるからだと感じています。デザインというものの捉え方が人それぞれで、個々でデザインの価値が大きく異なるのです。共通の価値を見い出せなければ、価格など決まりようもありません。全く別の商品を取り扱っているようなものです。多くの人の価値観で言えば、続けていくための必要最低限だけがあればよく、煌びやかさや華やかさはお金を払ってまで得る必要がありません。もし仮にデザインの目的が煌びやかさなのだとすれば、それは一部の人たちにとっての価値であり、その人たちだけに必要なものと言えるでしょう。例えるならパトロンと肖像画家のような関係性です。庶民や農民は生活に必要ない肖像画に憧れることはありません。当然、依頼することもなければ、対価を支払うこともない。デザインは一部の裕福な人たちの肖像画や宝飾品ではありません。デザインの本質は装飾ではないのです。デザインは目的を達成する手段で、その目的を煮詰め研磨していくことで結果的に美しいデザインが生まれるのです。私が考えるデザインはもっとパブリックで誰もが共有できる価値を持つものなのです。

誤解を恐れずに言うなら、デザイン費用は皆さんの考える価格より高いかもしれません。それは私たちデザイナーがデザインにそれだけの価値があることを知っているからです。しかし、デザインがもたらす真の価値を体験することができなければ、それに対価を支払うことができないのも事実。そこで私たちはベンチャー企業や中小企業が行う商品開発などに関して、イニシャルゼロというデザインフィーのシステムを実践しています。イニシャルゼロは、クライアントによるデザインの一括買い上げではなく、デザインにかかる初期コストをゼロ円にする代わりに、その商品の売り上げに応じて事前に決められたパーセンテージのロイヤリティを支払ってもらう仕組みです。デザインした商品がヒットすればそれに応じ私たちの利益も大きくなり、売れなければそのリスクを事業者と私たちが共に背負うというものです。当然、私たちにとっても目先の利益を追わないデザインでの投資となるので、事業者の本気度や商品の可能性を知った上、相互の利益のため実践する新しいデザインの料金形態です。
デザインの価値を広く知ってもらうためには、デザインに対する理解が必要です。そして、理解してもらうためにはデザインする意味を体験してもらうしかない。デザインの可能性を広げるため、私たちは新しいチャレンジを始めています。

P.K.G.Tokyo ディレクター:柚山哲平

COLUMN

デザインから伝わる「使いやすさ」の正体

2020.10.08

お店の入り口で押して開けようとしたドアが引き戸だったり、
ガラス張りの建物の入り口が見つからず困ったり、
飲料マシンの操作ボタンを間違って押してしまったり、
日々の暮らしの中で「何気ないミス」を経験した方も少なくないのではないでしょうか。

「アフォーダンス」は、アメリカの心理学者J・Jギブソンが「afford/与える、提供する」という意味から造語した、物理的なモノと人の関係を指した認知心理学における概念です。
J・Jギブソンは「アフォーダンス」をモノの属性と、それをどのように使うことができるかを決定する主体の能力との間の関係のことであり、物をどのように操作するかに強力な手がかりを提供すると定義しています。

コップの取っ手が「持つ」という動作をアフォードしている。
ドアに取り付けられた平らな板は押すことをアフォードしている。
ノブは回すこと、押すこと、引くことをアフォードしている。
小さな細長い穴は何かを挿入することをアフォードしている。

知覚されたアフォーダンスは、どんな行動を取りうるかを
表示や説明の必要なしに思い描く助けになるという考え方です。
回しやすい蛇口の形状や、操作をストレスなく行えるボタンのスイッチ、
押すと引くのサインが無くても簡単に開けられるドアの引き手。
意識しなくとも、自分の求める動作が自然と出来ている状態です。

パッケージにおいても、このような面から様々な包装材の工夫がなされています。
例えば、調味料のキャップ。開け口の小さな出っ張りが指の引っ掛かりを作り、
ワンアクションで開けられるようになっています。
また、ゼリーやヨーグルトのカップ、ハムやベーコンのフィルムの開け口を教えてくれる小さなつまみ。
このようなパッケージの「アフォーダンス」は一見何気ないものですが、
日々の暮らしをとても快適にしてくれるのではないでしょうか。

しかし、一方でパッケージに限らず、過剰な機能を増やしすぎたために
返って操作が困難になり「使いにくく」なったというユーザーの声も多く聞かれます。

人々が潜在的にモノを不自由なく使うためのアクション。
それを起こさせるためのデザインの構造や仕組みとはどのようなものなのでしょうか。
「使いやすさ」の正体のヒントを元に、今の時代本当に求められていることは
何なのか。これからも考えていくことが必要だと感じました。

「誰のためのデザイン?」
-D.Aノーマン(新曜社)

「論理的思考によるデザイン
造形工学の基本と実践」
-山岡俊樹(ビー・エヌ・エヌ新社)

P.K.G.Tokyo 大西 あゆみ

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