P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

COLUMN

パッケージデザインは新時代に順応できるか。

これまで歴代のヒット商品は、とても印象的なデザインが採用されています。どれも記憶に残る素晴らしいパッケージデザインです。新旧、流行り廃りはあれどヒット商品が名作デザインであることはとても多いと感じます。それは言い方を変えれば、良い商品とは良いデザインによってプレゼンテーションされていると言えるのではないでしょうか。
プレゼンテーションされているとはどういうことか。例えば、これまでにない美味しさの食品が新たに開発されたとします。その事実をコンシューマーに伝えなければ評価を受けられず、当然商品が生き残ることはできません。多くの人に価値を認めてもらうために、作り手は「新しい美味しさ」をプレゼンテーションする必要があるのです。あらゆるコミュニケーションの中で、その「新しい美味しさ」という製品の本質に最も近い位置にあるものがパッケージデザインです。一見するだけでどんな人物かわかる「顔」になることこそがデザインの本懐。コンシューマーを納得させるだけの説得力が、その一瞬のプレゼンテーションに込められているのです。「百聞は一見にしかず」という言葉がありますが、その一見をデザインで表現することこそがヒット商品の呼び水となるのではないでしょうか。

しかし、時代や社会の進化は著しく一筋縄ではいかないようです。先述した例えではありますが「新しい美味しさ」と簡単に書いたものの、同じ枠組みの中で画期的な新しさとはどのぐらい開発できるものでしょうか。各企業の努力によってコンビニやスーパーで買えるものは大体美味しいし、ひどいものはすぐに淘汰されてしまいます。ものも情報も豊かな現代において、そもそも味のイノベーションなどそうそう起こるものではありません。品質の飽和はデザインの飽和を生み、どのデザインも似た表現に偏っているのが現状です。特に言うことがないものをプレゼンテーションするために、言葉を重ねることほどひどいものはありません。
そして時代は変わり、店頭で直接購入することだけが購買プロセスではない時代になりました。同じカテゴリーの商品が並ぶ棚で、いかにしてスポットライトを勝ち取れるかを競っていたパッケージデザインの目的は少しずつ消失しつつあります。またコンシューマーとの新しい関わり方も盛んになってきました。サブスクリプションサービスは買って終わるコミュニケーションではなく長期的な利用を目的としています。これまで商品だったものがサービスとなったのです。商品の本質が変化したのであればそれをプレゼンテーションするデザインも進化しなければなりません。

これからの時代、ニーズが細分化する中で生まれるヒット商品とはどんなものになるのでしょうか。新しい時代には新しい価値が求められます。デザインで表層を取り繕う時代は終わりました。クオリティが均質化する社会において、デザイン経営に代表されるようにデザインは「顔」としてだけではない、新しい価値を体現する役割が求められています。
ビートルズは昔、前衛的で不良の音楽とされていましたが、その後誰もが聴く音楽となり今ではクラシックと言っても過言ではない。デザインもまたクラシックの領域に入ろうとしています。しかし、いまだに新しい音楽が新しいニーズに合わせて生まれるように、デザインもまた社会の変化に対応し、役割を変えながら進化していかなければいけないのです。淘汰の道を免れるため新たなベクトルにシフトすることが、デザインにも求められていると感じています。

P.K.G.Tokyo ディレクター:柚山哲平


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