P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

COLUMN

二代目パーパス誕生から1年。パーパスは生きている。

2025.05.12

パーパスとは、株主だけではなく従業員や取引先、地域社会といったすべてのステークホルダーへのコミットメントを「社会における存在意義」として宣言したステートメントのこと。

米国の有力企業のCEOが名を連ねる財界ロビー団体ビジネス・ラウンドテーブルが「企業のパーパスに関する声明」を発表した同じ年、創業2年目のP.K.G.Tokyoは初代パーパスを掲げました。2019年当時の従業員数は増員したばかりでもわずかに5名。次のステージのためにWebサイトのリニューアルに合わせての公開でした。

改めてP.K.G.Tokyoの初代パーパスを振り返ってみたい。

「世の中のあらゆる価値をデザインで更新し、世界のすみずみへ届ける」

こうして再掲出しても、今なお自身の根底にあるデザインに対する理想の姿勢を表していると思います。それは、あらゆるものごとに価値はあり、デザインはその価値を誰かのためにより良くアップデートして社会に届ける力があるということを伝えています。デザイナーである限り失いたくない想いであることに違いありません。

では、なぜ変えたのか。

初代パーパスはP.K.G.Tokyoの実態からするとかまえが大きすぎること。受け取る側によって解釈が異なること。依頼主や従業員の実感にまで降りてくることが難しかったこと。コロナ禍を経た2024年、依頼主も依頼内容も広がり従業員が倍に増えるタイミングで、より共感度の高い二代目パーパスの必要に迫られていました。

二代目パーパスは、次世代社会における私たちの存在意義を宣言。

P.K.G.Tokyo Purpose

「対話が導くデザインで、心が躍動するブランドをつくる」

私たちにとってデザインという活動は、それ自体が悦びでありながら、社会において私たちの存在意義を示すことができる職能です。その職能を駆使して私たちが手掛けたいのは、次世代へと価値をつなぐことができるブランドをつくることに他なりません。未来が今よりもさらに躍動する社会であって欲しいからこそ、私たち自身がデザインに心を躍らせながら、人々の心が躍動するブランドを世の中に届けたい。それこそが次世代社会の一翼を担うと心を決めた、新しいP.K.G.Tokyoの存在意義です。

「対話」というプロセスを経て「ブランド」というゴールを目指す姿勢を、次世代のP.K.G.Tokyoの実態に重ねました。

さらに私たちは、二代目パーパスを達成するためにP.K.G.Tokyoとして初めてインナー向けのバリューズ策定し、私たち自身の行動指針を明確にすることを試みています。

P.K.G.Tokyo Values

  • 好奇心 「好奇心をひらけ。世の中はポジティブに変換できる」
  • 洞察力 「あたりまえを疑え。自分自身のこころで本質を捉えよう」
  • 共感力 「共感をまとえ。他者の世界を五感で感じとろう」
  • 主導権 「主人公となれ。つくる悦びを我がものにしよう」
  • 審美眼 「美意識を磨け。美とは何かを考えつづけよう」

 

二代目パーパスとバリューズが誕生して1年。P.K.G.Tokyoは理想の姿に近づけたのか。まだ途上ではありますが、二代目パーパス宣言以降、私たちの活動は、従業員一人ひとりのパーソナルパーパスミーティングや、役職ごとの評価軸制定などへと展開しています。その効果が社内から社外へと広がってゆくことを信じて活動を続けてゆきます。

最後に、パーパス経営のメリットを5つ挙げてみましょう。私たち自身が対象となって、これからも時間をかけてこれらの効果を測りながら、パーパスとともに成長してゆく組織になりたいと思います。

  • 1.ステークホルダーからの支持拡大
  • 2.従業員のエンゲージメント向上
  • 3.ブランド価値の向上
  • 4.イノベーションの促進
  • 5.意思決定の迅速化

 

私たちが手がける事業のひとつ Identity Tokyoではパーパスを軸にブランド開発を行っています。気軽にお問い合わせください。対話から始めましょう。

 

P.K.G.Tokyoディレクター 天野和俊  

COLUMN

ブランディングにおけるショッパーの役目と重要性

2025.04.28

ブランド戦略を考える上で、パッケージデザインや広告だけでなく、「ショッパー(買い物袋)」の存在も軽視できません。

多くの企業がデジタルマーケティングに注力する一方で、実店舗での購買体験を大きく左右するショッパーは、ブランドの世界観を伝え、顧客の購買後の満足度を高める重要な役割を果たします。

 

【ブランディングにおけるショッパーの役割とは?】

ショッパーとは、商品を購入した際に持ち帰るための袋のことです。紙袋やビニール袋など素材はさまざまですが、単なる「持ち運び用の袋」としてではなく、ブランドの一部として機能しています。

① ブランドの世界観や想いを伝達する役割
ショッパーは、商品の「包装」の一部でもありますが、商品の一部として顧客が商品を購入した後もブランドの世界観や想い、目指したい方向性を補完する重要なアイテムです。
選ぶ素材やデザインによって高級感を感じさせるブランドにしたいのか、ECOに力を入れているブランドにしたいのかなど顧客にブランドの価値が視覚的に伝達するツールとしての役割も果たしています。

② 広告・プロモーションツールとしての役割
ショッパーは、消費者が持ち歩くことで「移動する広告」としての機能を果たします。ブランドのロゴやデザインが入ったショッパーを持つことで、街中や公共の場でブランドの認知度を向上させる効果が期待できます。

③ 顧客のロイヤルティを高める役割
洗練されたショッパーは、顧客が再利用したくなるため、ブランドとの接触機会を増やす役目もあります。お気に入りのブランドのショッパーを2次利用することで、ブランドのファン意識が高まり、リピート購入のきっかけになることも予想されます。

【環境問題に対する関心から変化する現代のショッパー】

2020年7月からプラスチック製レジ袋の有料化が始まり顧客の心境にも変化がありました。

全国の消費者3,000名を対象に2021年3月に実施された「Ponta消費意識調査」によると、家庭のプラスチックごみ削減のために取り組みたいこととしては「マイバッグを利用する」が94.2%にも及ぶという結果がありブランドでも環境に配慮したショッパーを導入する動きが広がっているようにも思えます。
(引用 : chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.loyalty.co.jp/storages/pdf/210427_1.pdf)

A.P.C.
「A.P.C.」は2022年5月、使い捨ての紙製ショッパーを廃止し、何度も繰り返し使用できるリサイクルポリエステル生地へ切り替え、販売を開始しました。売り上げの一部はWWFジャパンの環境保全活動へ寄付されるそうです。(画像引用_https://zozo.jp/elove/42155/

「BEAMS」は2021年5月、年間39万枚生産していたビニール製ショッパーを廃止し、GOTS認証を受けた100%オーガニックコットン製のショッパーに切り替えました。
“都度ショッピングバッグを消費する”という前提を変えていくことがねらいで売上の10%は公益財団法人オイスカ「子供の森」計画へ寄付されるそうです。(画像引用_https://zozo.jp/elove/42155/

 

【ブランドにおけるショッパーの重要性】

ショッパーは、ただ商品を購入した際に持ち帰るための袋という領域を超え始めています。
存在そのものを疑問視される世の中で、デザインや素材を通じてブランドの世界観やこだわりを伝える為にブランドにとってより大切なツールになりつつあります。

ショッパーに担わせる役割は年々増えてくると予想される中で、どういうデザイン・素材・メッセージを込めるかによってブランドの今後を左右していくことにも繋がるのだと思います。
むしろブランディング戦略においてショッパーを“後回し”にしていては本当に価値のあるブランドは築けないのではないでしょうか?

小さな袋ひとつにも、ブランドの魅力を詰め込む。
その意識が、これからのブランディングではますます大切になっていくのではないでしょうか?

引用:「ショッパー」がサステナブルに進化。脱プラやリユースの動きに注目!
– https://zozo.jp/elove/42155/

P.K.G.Tokyo 長田庄太郎

COLUMN

「ハラール認証マーク」から見る問題解決のデザイン

2025.03.06

皆さんは「タイ王国(以下、タイ)」を訪れたことがありますか?

トムヤムクンやパッタイなどのスパイス料理や寺院が有名で、年間平均気温はなんと29度、まるで「毎日が夏」のような温暖な国です。

先日、タイ旅行をしていた友人からお菓子や調味料のお土産をもらい、数年前の旅行を懐かしく思い出しました。「どうやって建てたの?」と思わず聞きたくなるような面白い形のビルや、路上で台車を引きながらフルーツを売る人々、市場から漂う美味しそうな匂い…。でも、やはり当時最も気になったのは、スーパーで目にした「商品パッケージ」でした。

今回はいただいたお土産を紹介しながら、タイならではのパッケージの特徴を深掘りしていきます。

「ミルクタブレット」

「これなんだと思う?」と笑みを浮かべながら渡されたこの白い袋。傾いたお釈迦様のイラストにネイビーの文字で商品名が書かれていて、中身は見当がつきません。ティーパックかドリップコーヒーかと思い、触れると硬くて丸い円盤のよう。開けてみると、昔懐かしいミルクケーキのような「ミルクタブレット」が出てきました。味はとてもおいしく大容量で魅力的ですが、外見と中身のギャップに驚きました。

「ひまわりの種」

こちらのパッケージは中身は想像がつきますが、モデルの全身をオモテ面に入れるという斬新さに惹かれました。(さらにはサインも書かれていました。)クラフト素材に彩度の高い色を入れると、くすみが弱くなり、柔らかい雰囲気を表現するクラフトでもしっかりと存在感が出せるのかと勉強になりました。

以上2つのパッケージを紹介しましたが、実は共通するポイントがあります。

それは「ハラール認証マーク(Halal Mark)」の記載です。

これはイスラム法(シャリーア)に基づいて製造された食品や製品に付けられる認証マークで、ハラールはアラビア語で「許されている」「合法的な」を意味します。イスラム教徒が消費しても問題ないことを示すものです。実際、いただいたお土産のほとんどに、誰が見ても分かりやすいサイズでハラール認証マークが記載されていました。

では、なぜこのようなイスラム教徒の生活に配慮した表示が多く見られるのでしょうか。日本貿易振興機構(JETRO)によると、2022年のタイ国民の全人口は約7170万人、そのうち95%以上は仏教徒、1.4%をイスラム教徒が占めていると言われています。一見少ないように感じるかもしれませんが、数で示すと約390万人。「18人に1人」がイスラム教徒であるこということを考えると、私たちが住む日本に比べて圧倒的に多いです。つまり、ハラール認証マークの記載がないと、それだけの人が食品を「気軽に口にできない」ということになります。こうした宗教的背景を作り手だけでなく、デザイナーも理解することが、積極的にハラール認証マークを記載することに繋がったのではないでしょうか。

話が少しそれますが、このハラール認証マークの重要性を改めて考えた時、佐藤卓さんの言葉を思い出しました。

「デザイナーとは『デザインのスキルを使って、物や事の本当の価値を人や人の暮らしへと繋ぐこと、物やクライアントと生活者の間に立って、伝えるべきことを適切に翻訳し、正しく伝わるようにお繋ぎすることです。』」

タイのパッケージデザインはハラール認証マークを通じてタイに住む「イスラム教徒」と「ハラール認証を受けた安心な商品」をつなげています。これはデザインが果たすほんの一例ではありますが、この「問題解決」こそ私がパッケージデザイナーを目指したきっかけだと言えます。

近年、アジア諸国に限らず世界各国でイスラム教徒の人口が増加しています。その数は20年後にはキリスト教徒を上回るのではないかとも言われています。つまり「ハラール認証マーク」を記載する商品が、日本のスーパーでも当たり前のように陳列される日は、そう遠くないということです。「問題解決」というパッケージデザインの役割を意識し、この商品がどの地域で、どのような人々に手に取られるのか、常に深く向き合っていきたいです。

出典:

amana iNSIGHTS「気付かれないデザインこそ、デザイン。佐藤卓さん(グラフィックデザイナー)」2017年11月16日(最終閲覧日2025年3月3日)

日本貿易振興機構(JETRO)「ASEAN主要国におけるハラール認証制度比較調査~マレーシア、インドネシア、シンガポール、タイにおける制度比較~」2024年3月15日(最終閲覧日2025年3月3日)

ニッポンドットコム『「知ることから始めよう」-偏見や差別をなくすために:日本人ムスリムの訴え」2024年6月13日(最終閲覧日2025年3月3日)

COLUMN

「包む」生命の本質

2025.02.04

私がパッケージデザインの道を選んだのは、先生が書いた一つの詩が大きなきっかけでした。

「包まれること」

地球に生きてる僕たちは
大気の中で包まれて生きている。
生命はすべて包まれた存在だ。
母親のお腹に宿った生命は
やさしく包まれて生まれてくる。

包むことは生命のすべてにおいて必要なこと。
パッケージデザインとは生命かな。
そして
外見も生きた表現にするコトが
大切なんだよ。

この詩は授業でパッケージデザインを紹介する時に見せてくれたものです。読む度に自分の専門に対する誇りと哲学的思考を与えてくれ、長い間自分のノートに残っていることで励みになっています。

パッケージは、単に物理的な保護や流通の便を提供するものだけではありません。「包む」ことが、生命の営みを象徴する行為であり、生物の進化や希望、生存を支える根源的な役割を果たしているということに、気づくことができました。まるで母親が子を包み込む愛情のように、パッケージが中にある価値を優しく保護しつつ、未来の希望をつないていく二つの視点を捉えていると思います。

そして、日本は「包む」ことが好きです。贈り物を包む、食べ物を包む、お金を包む、言葉を包むなど、日常に包む美学が溢れています。たとえば一枚の白い紙を使って折形礼法で贈り物に気持ちや自分の行動に形を与えています。そこには贈る相手を大切に思う気持ちや心そのものを守る想いなどが込められています。このような背景から「包む」という行為には精神的な豊かさが宿っていると思います​​。

一方でパッケージの役割は現代の消費社会の中で再定義されつつあります。環境問題が叫ばれる今、持続可能性を追求したデザインは「包む」そのものが生命を尊重する行為であることを再認識しました。素材や形状だけでなく、リサイクル可能な設計や廃棄後の未来まで考えることが今のパッケージデザインにとって不可欠になっているのです。

パッケージが物理的な役割を超えて、命の象徴として位置付けられることで、その存在がさらに深まっています。「包む」という行為が生命の保護、共有、そして次世代への希望を示しており、私たちの仕事が未来へつながる道を包むことでもあります。今日も、デザインに向き合うとき、先生が教えてくれた「包む」という行為の本質を思い出しました。それは、生命や文化、人々の心を結ぶ行為であり、私にとって生涯をかけるに値する挑戦だと感じています。

参照サイト
機関誌『水の文化』41号 和紙の表情
https://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no41/07.html

P.K.G.Tokyo 朱 贇

COLUMN

「三方よし」から考える、現代ビジネスのブランディング

◉日本経済に大きな影響を与えた「三方よし」

大阪商人・伊勢商人と並び、日本三大商人として名高い近江商人は江戸時代、現在の滋賀県を拠点に天秤棒一本から財をなし「近江の千両天秤」と呼ばれるほど活躍していました。近江の商人たちは商いにおける独自の行動哲学を大切にしており、その考え方を後世に伝えるものとして「三方よし(さんぽうよし)」という言葉があります。

三方とは、企業に関わる「売り手」「買い手」「世間」の3つを表しており、
「売り手」である自社だけが儲かって喜んでいてはいけない。
「買い手」である顧客にも使われ、喜んでもらえるものでなければならない。
そして、一番重要なのは、自社と顧客だけでなく、「世間」も喜んでくれなければいけない。
この三者が喜ぶような商売をしないと、ビジネスは長続きせず、さらに繁栄し続けることは出来ないという事を示している言葉です。

「三方よし」は伊藤忠商事、住友財閥、高島屋など、日本を代表する企業の社是となっており、各社の功績からもこの指針が日本経済の発展に与えた影響の大きさが伺えます。また、創業100年以上の長寿企業ランキングにおいて、日本企業は約37,000社以上と米国の約21,000社を抑え、世界一を誇ります。(数値は2020年時点)
日本に長寿企業が多い理由として、江戸時代に各商店(企業)が導き出した経営手法を、近代まで代々継承し、持続させようとした試みが大きいとされています。継承していく象徴の表現として、暖簾や家紋というデザインが使用されました。
会社の存在する意義・姿勢を、社内外問わず、広く世間に対して示すこと。
自社独自の経営方法を築き上げ、時代に合わせて変化させながら、代々継承していくこと。
この考え方は現代の「ブランディング」に通ずるのではないでしょうか。
「三方よし」と現代の企業ブランディングとの関連性をもう少し掘り下げてみましょう。

 

 

◉「三方よし」をブランディング視点で考える

◎売り手よし
これは自社の上げる売上・収益の増加といった利益的な側面はもちろんのことですが、ここで注目したいのは従業者の満足度の高さについてです。
従業者それぞれが自分の行っている仕事に誇りを持てているのか、その労働に見合った満足な対価を得られているのか。対価とは金銭はもちろんのこと、対人関係や社内環境、仕事を通じて得られる達成感など心理的で把握しづらい価値も存在し、経営者は社内の人数によらず、それらの意識をコントロールすることが必要となります。
これらを叶えるために有効な手段として、インナーブランディングという考え方があります。
インナーブランディングは、従業者に対して企業の理念やビジョン、価値観を共有し理解を深め、共感や愛着心を持って行動してもらうための活動です。従業者が自社やブランドへ愛着を持つことは企業への満足度やモチベーションを高め、離職率の低下・ブランドのイメージアップ・優秀な人材の確保・生産性の向上などにつながります。

インナーブランディングの成功例として名高い、東京ディズニーリゾート。従業者はディズニー・ユニバーシティ・プログラムという研修を入社後も定期的に受けるのだが、その内容は業務のオペレーションやマニュアルに関することと合わせて、創設者であるウォルト・ディズニーが掲げた行動基準を徹底的にレクチャーされる。共通の価値観の伝達によって、従業者が目指すべき行動が共有され、一人ひとりが自発的にブランドを体現したパフォーマンスを行い、満足度の高い顧客体験を生み出す。

 

◎買い手よし
企業が生み出すものはもちろん顧客を満足させるものでなくてはなりません。その満足を生み出すために考えられるタッチポイントは、大きく2つ挙げられます。
まず、自社の提供する商品を通じたコミュニケーションです。商品ブランディングには、製品品質の高さ・ネーミング・コンセプト・パッケージデザイン・CM制作・web制作などなど、様々な要素から成り立っています。
もう一方で私が重要と考えるのが、従業者の対人パフォーマンスです。顧客がその商品を購入する際、売り手である従業者から受けるイメージや態度一つが会社への印象・イメージを作り上げていきます。
従業者の対人スキルをマネジメントすることは、顧客の満足度をより高める要因として機能するのではないでしょうか。

第3の場所を売ることをコンセプトに掲げているスターバックスコーヒー。職場・家庭とは異なるリラックスタイムをもたらす空間作りを運営するため、従業者は80時間の研修を受けることが必須となっている。しかし、その中には接客マニュアルは含まれておらず、具体的にどう行動するべきかを本人が考えなければならない。各人が職場で自分らしさを発揮できる風土が、他のチェーン系飲食店よりもスタッフ定着率や復職率が高い要因となっていると考えられる。

 

◎世間よし
ここで表されている世間とは、地域社会やコミュニティ、地球環境など、企業を取り巻く環境を表します。
社会や時代が求めているテーマは時代によって移ろいゆき、現在ではSDGs(持続可能な社会の実現)やESG(環境・社会・ガバナンス)などの社会課題が一般的に注目されていますが、会社の規模や指針に応じて、対応するテーマは異なリます。
環境問題のような大きな課題だけではなく、地域社会との関わり、身の回りの小さなコミュニティ1つ取っても重要なテーマとなり得ます。
自社が苦境に立たされているとき、手を取って応援してくれる人がどれだけいるのかが、その会社の普段の行い、社会貢献度の写し鏡ともいえるのではないでしょうか。
企業の長期存続・繁栄のためには、世間よしの視点は必須と考えます。

ペットボトルのリサイクル活動の啓蒙など、環境問題というテーマに重きをおいて様々な発信をしているSUNTORY。近年、商品宣伝だけではなく、ペットボトルのラベルを剥がすことの重要性を訴える企業広告をTV等にて放映している。CM内の「サントリーのじゃなくてもね」というセリフに企業の矜持としている姿勢を感じる。

参考
企業広告「#素晴らしい過去になろう ペットボトルでまた会おう」篇 60秒 サントリー
https://www.youtube.com/watch?v=rsQeKctTb-w

 

 

◉現代ビジネスと「三方よし」

今回注目した三方よしの考え方は、社会とのつながりを見据え、多くの人と手を取り共生しながら広く長く繁栄していくビジネススタイルの提案とも捉えられます。

多様性という考え方が広く一般化した現代ビジネス社会では、個人に対する選択肢や裁量度が大幅に増加しています。個にフォーカスした、より専門的で複雑なビジネス体系が社会の一翼を担っていく中で、経営の核となる姿勢を示した指針を立てることは、社会に対する存在意義を表し企業の強みとなるのではないでしょうか。
そしてその強みを社内外や世間へ伝達するために、デザインを利用することは強力な手法の一つです。
自社の存在意義を明確にすること・自社のブランディングを進めること・社内外に対してデザインを用いて伝達することは、それぞれが独立した要件ではなく全てがシームレスにつながって成り立っていると私は考えます。
そのため、一つの要件について考えるということは、他の要件のことも同じように考慮しどのように影響を及ぼしあっているのか慎重に検討することが必要です。

理論と表現、そして「利益や理屈だけでは表せない人情のようなもの」を少しのエッセンスとしてかけ合わせることで、様々な人に長く愛され繁栄していく組織の土台となり、それらを変化・持続させていくことは自社ブランドの独自性を高めることに繋がっていきます。
この考え方は組織に対してだけではなく、分野を問わず、個人個人の仕事に対する姿勢にも通ずる普遍性を秘めていると感じています。

 

P.K.G.Tokyo 稲田 拓真

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