P.K.G. MAGAZINE | パッケージを考える

COLUMN

一枚の紙を折って作る古くて新しいテーマ

2025.10.10

最近、環境に配慮し紙パッケージに変更された商品をよく見かけるようになりました。 紙パッケージに変更することでプラスチック量とCO2排出量の削減ができます。 パッケージデザインに携わるデザイナーとして、 紙の新しい表現を考えていく良い機会なのではないでしょうか。 なかでも今回は紙を「折る」ことについて考えてみました。


 

「明日のものづくり」を探求する理念のもと、 リアリティ・ラボ(Reality Lab.)チームを中核に 2010年より再生ポリエステル繊維と立体折り紙の構造原理の研究を続けているブランド 「132 5.ISSEY MIYAKE」の「折りから生まれる かたちと思考」展のレポートと 立体折り紙の実践を通して紙の表現を探ってみました。

会場ではブランドの造形の根幹にある「折り構造」に焦点を当て洋服が出来るまでを多角的に展示しています。 また、折りたたまれた布の一端を持ち上げると回転しながら立ち上がり、 衣服としてかたちとなる時の“折りの動き”を視覚化して見ることができます。

会場の奥に小さなかわいいトルソーがあり洋服を着せる体験ができました。 平面の正方形の端を持ち上げると回転しながら立体になり肩掛けのワンピースになります。 またそれを元通りの正方形におりたたむことができます。 不思議で何度も布を持ち上げたりたたんだりを繰り返してしまいます。

この構造は、立体折り紙の第一人者である筑波大学教授 三谷純さんの球体の立体作品を参考に 三谷さんの協力もと、平面に折りたためる折り構造を模索し作られています。 沢山の立体構造が並ぶなか三谷さんの球体立体模型も見ることができました。(写真左)
折りによって作り出されるかたちの美しさに魅了されてしまいます。

三谷さんの著書「ふしぎな 球体・立体折り紙」「立体ふしぎ折り紙」から 私もいくつか立体折り紙を作ってみました。 折り線をしっかりと入れ、山折りと谷折りを繰り返すことで一枚の紙から綺麗な立体折り紙が出来ます! 本の中で『立体物を紙のまん中に置き包んで、はみ出た部分を外に折り出すように折る。この外に出た部分が羽のようにも見え、複数の羽が美しい造形の一部となる。』と書かれているように、 紙で立体を作るからこそ出てしまう“はみ出した余分な部分”が折り重なり その折りが立体物を包みこむことで装飾された美しいかたちとなる。 それは紙の特徴を活かした新しく美しいかたちだと気づかされます。

かたちの特徴に合わせて紙素材を選んでみるのも楽しいです。
(左図)No.10「波紋」:タイトルは波紋ですが私には雪山のように見えたため白くオーロラがかった紙を。
(右図)No.13「8角歯車」:鉄らしい重厚感と光を感じさせるように濃い色でラメ入りの紙を。

 

最後に展示会場と三谷さんの著書に書かれていた言葉が心に残りましたので、メモしておきます。

「折りと向き合うとき、手が思考の道をひらく。」

「折り構造には、たたむための制約と、展開の可能性が同時に息づいている。」

「すべての折りには、かたちの根拠がある。 その構造が整理されてこそ、潔く、明快な衣服が生まれる。」

「紙は、方向を見極めるための思考の道具。 紙と布を往復しながら、まだ見ぬかたちを探っていく。」

「一枚の紙を折ってかたちを作るということは、古くて新しいテーマ。」

 

紙素材が改めて見直されるなか、 古くから親しまれてきている「紙を折る」という手法で今までにない新しいかたちを考えていくことは 新しい表現の1つなのではないでしょうか。

 

 

 

 

132 5. ISSEY MIYAKE「折りから生まれる かたちと思考」
日程:9/1(月)-11/11(火)
会場:ISSEY MIYAKE GINZA / 445

 

<参照図書>
三谷純(著)「ふしぎな 球体・立体折り紙」二見書房 2009年
三谷純(著)「立体ふしぎ折り紙 」二見書房 2010年

 

P.K.G.Tokyo山根 彰子

REPORT

オフィスでワークショップを行いました!

2025.03.05

年始に社内でレゴ®ブロックを用いたワークショップを行いました。

「今年仕事で成し遂げたいこと」をテーマに、各々自由にパーツを組み合わせてそれぞれが成し遂げたい世界を表現しました。

「休み方改革」

目標は週休3日。目的はより集中して効率UPし、仕事のクオリティを高めるため。自ら率先して実験的に取り入れてみたい。

 

「新しい出会いにかかる橋」

未知の領域に橋をかけ、新しい仕事やクライアント、新しいパートナー企業や新しい技術など、昨年からバージョンアップするための新たな出会いを作っていきたい。

 

「攻めと守りの両立」

AIを中心とした未踏分野のインプットをしつつ、これまで着実に積み上げてきたものをさらに良くしていく。

 

VUCA時代に求められる価値観を身につける」

目まぐるしい変化についていけるよう、当たり前を疑いながら大切にするべき価値観を見失わ無いようにしていく。(思いやりは忘れずに。)

 

「ワクワクを探しに行く」

今まで築いてきた仕事の経験を大切にしつつ、新しいチャレンジを楽しみたい。

 

「デザインを言語化する」

デザインに込めた想いや感性が、相手に伝わるようにわかりやすく言語化していく。

 

「枠を超えていく。」

ジャンルに囚われることなくブランドに関わる全ての事に広くチャレンジしていく。

 

「デザイン探検隊」

新しいことを経験し、スキル・知識を身につけたいです!

 

「異世界の扉」

今までの自分になかった世界観やジャンル、苦手として通ってこなかった表現や考えといった新しい世界への扉を今年は自由に行き来出来るようになりたい。

 

「デザイン価値を表にする」

よりデザイン価値を感じられるようにわかりやすく方法を探しに行く。

 

「新しいつながりを求めて」

自分の足で様々なコミュニティに出向き、刺激をインプット。その先で新たな人・仕事との縁を繋ぐ。

 

「1年の学びを形にする」

自分らしい案件の進め方を見つけるため、1年かけて得た部分的な知識を実践しルートを作り上げる。

 

私たちは「対話が導くデザインで、心が躍動するブランドをつくる。」というパーパスを掲げ、クリエイティビティと共に価値の言語化を重視しています。

今回のワークショップを通して可視化した目標を基に、これからも人々の心を躍動させるブランドをつくっていきます。

また、P.K.G.TokyoではこのようなLEGO® SERIOUS PLAY®メソッドと教材を活用したワークショップを提供しています。概念を言葉以外の形で可視化できるのがこのワークショップの魅力です。ご興味ある方はお気軽にお問い合わせください。

REPORT

世界の暮らしの中のパッケージデザインを見つめる/ベトナム

2024.06.04

日々の中で、何気なく手に取るもの。
時折、眺めたくなるもの。
相手の喜ぶ顔を想像して、贈りたくなるもの。

パッケージデザインは
私たちの暮らしのなかの至るところで目に触れることができ、
世界各国、無数の表現に溢れています。

今回は「ベトナム」ハノイのロッテマートです。
こちらから何点か商品をピックアップし、パッケージデザインを深掘りしてみます。

Kokola majorico /チョコレート菓子/ 250g/59000vnd(約360円)
インドネシアのメーカーの商品。
特徴的なドリンクのような容器は手にとるとずっしりとしており、ボリュームあるサイズ感です。商品ラインナップはチョコレート、チョコバナナ、抹茶フレーバーなどがあり、どれも非常に鮮やかなカラーのパッケージで店頭でも目を惹きます。

G7/インスタントコーヒー/15袋入/60000vnd(約390円)
ベトナムはコーヒーの生産世界第二位。
独特な赤と黒の配色は、ベトナムの人にとって「健康」や「先進的」を感じさせるカラーだそうです。ヘリコプターから降りてくるビジネスマンの男女の写真の入ったパッケージをお土産にもらったことがある方もいるのではないでしょうか。

MR.VIET/チョコレート/60g/95000vnd(約580円)
ベトナムの農家のおじさんの姿を想起させるユニークなパッケージ。
ベトナムの地元農家を世界と結びつけることを目標に製品を展開しており、
産地にもこだわっているブランドです。チョコレートだけではなく、ドライフルーツや珈琲、お茶などもラインナップは様々です。こちらでも「赤」と「黒」のカラーが使用されています。

Hủ Tiếu Nam Vang /インスタント麺/60g/5900vnd(約36円)
カラフルでインパクトのあるインスタント麺のパッケージの中でもひときわ目を引く、白で落ち着いた色合いのパッケージはロッテマートのプライベートブランド「choice L」のインスタント麺です。全体を手書きでまとめており、どこか優しい印象を感じさせます。日本ではあまり食品に使われない配色や表現もユニークです。

どの商品も、アイコンひとつにとっても表現の違いがとても興味深いです。海外のパッケージデザインを通して、日本のパッケージデザインへの見え方もまた変わってくるのではないでしょうか。引き続き、様々な国のパッケージを調査していきます。

参考資料 : アジア諸国でのカラー・イメージの共通性と差異/日本カラーデザイン研究所

P .K .G .Tokyo  大西あゆみ

REPORT

Meiji Dear Milk 「シンプル」へ価値を見出すアイスクリーム。

大手乳業メーカーである明治が独自技術を用いて開発した、原材料が乳原料のみというアイスクリーム。P.K.G.Tokyoがコンセプトからネーミング策定に伴走し、パッケージデザインの開発を行いました。

「原材料、乳製品のみ」とコミュニケーションしているこのアイスクリームは、発売以来アイスファンの間で話題に。私も開発に関わっていた頃から発売を楽しみにしていました。今回はDear Milkの一ファンとして、気に入っている食べ方をご紹介します。

 

 

1.ナッツをかける

カリカリとしたナッツの食感と、なめらかな口溶けのDear Milkのコントラストが美味しいアレンジ。ナッツに塩がまぶしてあるタイプだと塩ミルクアイスクリームになります。食べ応えがあるのでお腹を満たしたい時にぴったり。食べ応えという点ではグラノーラをかけるのもおすすめです。Dear Milkの上品な味わいを活かすために、甘さ控えめタイプのものを選ぶと良いと思います。

 

2.はちみつをかける

喉が痛い時や発熱している時、食欲はないけれどアイスクリームなら食べられるという人も多いのではないかと思います。私は風邪をひくと必ずといって良いほどアイスクリームで熱った喉を潤しています。初めてDear Milkを試食した時、これは風邪のお供に最適だ!と思いました。余計なものが入っていない事が体に嬉しいし、後味がさっぱりとしていて食べやすいからです。そのままでももちろん良いですが、さらに喉のために殺菌効果、抗炎症効果の高いはちみつをかけて食べるのがおすすめ。はちみつをじんわり喉に当てながらDear Milkの冷たさを味わうと、病気で辛い中にもひとときの幸せを感じられます。

 

3.コーヒーにかける

冷たいアイスと熱いコーヒー。この組み合わせが好きな人も多いのではないかと思います。別々に味わうのも良いですが、Dear Milkが溶けてきたらコーヒーにかけて飲むのも美味しいです。クセがないやさしい甘さなのでどんなコーヒーとも馴染むのではないかと思います。完全に溶けてしまった後にもできるアレンジです。

 

以上、いかがだったでしょうか。やさしい甘さとコクがありつつも後味がすっきりしていて、クセのない味わいのDear Milk。どんなものにも合う、まさにシンプルイズベストを体現しているアイスクリームです。フルーツと合わせてももちろん美味しいですし、スパイスをかけても意外な美味しさを味わえることを最近知りました。

 

アイスクリームには珍しく卵を使用していないこともポイントです。卵や乳化剤を使用していないのにこの味わいを作り出しているのは大変な企業努力があるわけですが、商品コンセプト及びパッケージデザインにおいては訴求内容を増やさず、常に「シンプル」を意識しました。さまざまな人が自分のお気に入りの食べ方を見つけられる懐の深さがあり、派手さはないけれどすっと日常に寄り添ってくれる、今まであるようでなかったアイスクリームです。2023年8月現在は関東エリアと、ふるさと納税で入手することができます。

 

P.K.G.Tokyo 中澤亜衣

 

Meiji Dear Milk

内容量 : 130ml
配達日・地域:2023年3月・関東エリア/ふるさと納税(北海道十勝芽室町)

REPORT

包むー日本の伝統パッケージ 目黒区美術館

2021.07.30

戦前からアートディレクターとして活躍する一方で、
自然の素材が生かされたパッケージに魅了され、収集を続けた岡秀行さんのコレクションを
集めた展示「包むー日本の伝統パッケージ」。目黒区美術館を訪れました。

館内は「木」「竹」「笹」「藁」「土」「紙」と素材別に分けられており、
それぞれの素材を生かしたパッケージが展示されています。

左 ささらあめ:宮城県/熊谷屋
中央 濱焼桜鯛:岡山県/株式会社 鯛惣
右 岡山獅子:岡山県/中尾正栄堂

ささらあめ
ひご竹の先に小さなさらしあめをつけ、それを竹筒に差し込んだシンプルな形状。
素材の特性を生かした放射状に広がるかたちは見た目にもとても面白く、可愛らしさもあります。
残念ながら現在は作られていないとのこと。竹ひごに飴を付けるのが難しそうですね…
濱焼桜鯛
竹皮で編んだ菅笠を二つ折りにした形。風通しがよく、運搬し、一時保持するために機能的な形状。

左 釣瓶酢:奈良県/釣瓶酢弥助
中央左 おひねり
中央右 真盛豆<利休井筒>京都府/金谷正廣
右 鬼づら 香川県

おひねり
おひねり、はまさに「チップ」のこと。一見お菓子が入っているのかと思いきや、お金でした。
例え、とっさのことでもむき出しを嫌う日本人的感覚の所産。
包むという面白さ、さっとした所作から生まれる紙の大胆な美しさに目を奪われました。

どのパッケージデザインも現代では私たちがなかなか目にすることの無いものが多い印象でした。
現代では量産にはなかなか向かない形状、またパッケージ費用を考えると製造は困難と感じるものも。
しかし素材の特性や形状を大胆に生かしたり、細密さに富んだデザインは非常に新鮮です。
特に竹や藁などを使ったパッケージでは、様々な編み方で異なる形状を作りだしたものが多く、
素材を無駄にせずいかに機能的に作り上げるかという作り手の考えを感じました。
よく一つの素材で、ここまで考えられるのかと驚かされます。

展示のなかで、岡さんの言葉が印象的でした。

ー豊かな暮らし、豊かな社会というそれまで一度も疑われようとしなかった大きな目標が
いったい本当に正しいのかどうか、密かな疑問が生まれつつある。
伝統パッケージを単なる古き良き自体の記念碑に終わらせてはならないであろう。
人間のこころそのものに光を当てた新しい価値観が来るべき時代の方向を決することは疑いを入れない。ー

目まぐるしく変化していく時代のなかでのパッケージデザインの在り方とは何なのか、
もう一度立ち返らなければならないのかもしれません。展示を通し、改めて考える機会となりました。
今回の写真以外にも、非常にたくさんのパッケージコレクションが展示されており、
とても楽しかったです。是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

-包む 日本の伝統パッケージ
7/13(火)-9/5(日)まで 目黒区美術館
午前10時-午後6時(入館は午後5時30分まで)

P.K.G.Tokyo
大西あゆみ

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